2023年3月

かつての自分を思い出したあと、現在を生きる彼はどう思うのだろうって思った。
ミオくんとの入学式での出会いみたいなお話書いてて、オスカーは結構切り替えが早いというか割り切りがすごくしっかりできるタイプなのを改めて実感したので、永遠になったところも含めて否定はしないだろうが今の自分は今の自分だって線引きしてそうな気はする。
かつての自分の後悔や複雑な思いを理解しながら、今の自分らしくミオくんの隣に居続けるんだろうな。
だから、思い出して欲しくないと言ったら嘘だろうけど、あまり積極的に思い出して欲しくてともならない…….かな?これは。

 

ツイート見て絵面がいいなと思ったので失礼させていただいて……(流れるようにネタ使わせてもらってます。すみません)

「ミオ、ちょっとこっち来て?」
小ぶりなソファに腰を下ろしてオスカーが手招きをしている。その表情は穏やかで柔らかい。
「どうしたの?」
ほんの少しだけ口角を上に持ち上げながらミオは、招かれるままオスカーの元へ向かう。
二人で暮らし始めて数日。片付けも一段落して、生活がやっと体を成してきていた。
慌ただしい時間よりも穏やかな時間が増えてきた頃合だったこともあってか、二人はどこか上機嫌な様子で距離が少しづつ詰まっていく。
「あっち側向いてここに座って?」
オスカーが指したのは彼の目の前、床にはクッションが置かれており準備は万端といった風だった。向きまで指定してくるあたり、どうやら背中を預けて欲しいらしい。
「うん」
真意をはっきりと把握はできないまま、それでもミオはオスカーの指した通りの場所に腰を下ろす。おそるおそるミオが背中を預けてみれば、髪の毛を撫でられた。
「くすぐったいよ、オスカー」
「髪伸びたよね
「そうだね」
そうして言葉を交わす間もオスカーは何度も何度もミオの髪を撫でた。その手つきはまるで宝物にでも触れるかのように丁寧で、愛おしさに満ちたものだ。
しばらくの無言の時間の後、オスカーはゆっくりとミオの髪を解いた。
結び目を解きウェーブのかかった薄金の髪の毛が広がる。それをまた同じようにオスカーはゆっくりと撫でた。
撫でる動作はミオにとってくすぐったいものであるが、同時に心地のいいものでもある。表情は自然と緩んで、先よりも自然と口角は上向きになった。
表情こそ見えないが気配だけは確かに伝わる。
オスカーはそれを感じとって微笑むと、流れるようにミオの髪を少し掬いとった。そのまま口を寄せると軽く口づける。触れる時と同じく、愛おしさを滲ませながら。
けれどまだ足りない。
そんな貪欲さがオスカーを掠めていく。大切な人が目の前にいて、当たり前にそばにいることが嬉しくて幸せで。だが一度手にしてしまうと、もっと欲しくなってしまう。
オスカーは自分にこんなにも欲があったのかと驚いたものだが、それもまた自分であると受け止めてからはすっかり落ち着いたものだ。
それまで髪を撫でていた手を止めると、ミオのことを背後からそっと抱きしめる。
「えっと……急にどうしたの?」
少しの驚きを声に織り交ぜながらミオが尋ねた。
「ん? ミオのこと好きだなぁって、思って」
オスカーはその言葉を耳元で囁く。甘く、そして心の満ちた声がミオの耳に響いた。
穏やかな時間が過ぎていく。
あたたかく、幸せな時間がそこにはあった。

 

これまでの人生──と言っても、十数年のことではあるが──において、オスカーは不足を抱いたことはなかった。
家族にも友人にも恵まれて不自由なく、特に大きな病気や問題を抱えてもいない。
平和な毎日を生きてきたといっても差支えはないだろう。
だが、知ってしまった。
自分の奥底に刻まれていた記憶を。
得ては失う七日間の記憶たち。それを数珠のように繋いだ美しくて儚くて、幸せで切ない日々を思い出してしまった。
もちろんこれまでの自分を否定することはない。
しかしそれ以上の大きな感情を覚えてオスカーは思う。
──今度こそきっと。
かつての自分から溢れ出た記憶に刻まれた、大切な人。彼に再び巡り会えたのは運命なのか奇跡だったのか、それは誰にも分からない。
けれどオスカーは思う。
これはきっと、神様がくれたチャンスなのだと。やり直しの機会を与えてくれたのだと。
それくらい自惚れてもいいと思った。
ミオのことをあの瞬間に思い出して、目の前の彼をまた綺麗だと思えたのだから。

 

バレも何もないんだけど、勝手にやってたKPレスが合致したのでわらってる。

 

『キミに贈るセラム』※今回は閃いたのでタイトルがあります笑

世の中における二月と三月はちょっとしたイベント事が続く時期だ。
誰かに感謝を伝えたり、愛情を伝えたり、そういった機会に遭遇しがちでもある。
若かろうが歳を重ねようが等しく発生するこのイベントのうち、三月のものにオスカーは行き合うことになった。
とはいっても毎年貰ったチョコの返礼をしてはいたため、出来事そのものは特別というほどではない。
ただ今年は少し趣が違う。
大切な人への返礼、というのがあるのだ。
一緒に店に入って二人で買ったチョコを食べたりもしたのだが、それもは全く別でチョコを貰った。日頃の感謝をこめてのものらしかったが、これはどうしたものだろうかとオスカーは頭を悩ませている。
いっその事、欲しいものでも聞いてみるかと思ったが、そうしてみたところで解決策が導けるとも思えず悶々としてしまうばかりだ。
街中を見回しながら歩く。
時期柄ということもあって、ホワイトデーやお返しにといった言葉が各所で躍っていた。
そんな中にあって、こじんまりとした花屋がオスカーの目に留まる。
返礼相手であるミオが植物を育てることを好んでいることもあって、よろこんでもらえそうだと感じたオスカーの表情に安堵が浮かぶ。
いつの記憶だったか定かではない記憶の中で、選び色をつけた花たちのようにミオに花を送ろうとオスカーは心に決めた。
そして足先を目の前にある花屋の方への向ける。
店の主は少し頼りなさげな、困ったように微笑む男だった。

 

手には花のおさめられた紙袋を持ち、オスカーは歩く。
今日は一緒に出かけようと話していた。だからこそ昨日、返礼の品を探していたわけなのだが。
オスカーは少し浮き足立ちながら、待ち合わせの場所へ足を向ける。その場にはまだミオの姿はない。
彼は待ち合わせをするとき、いつもギリギリにやってくる。聞けば朝に弱いと話していたが、こんな所までかつてと変わらないのかと驚いたものだ。
オスカーの方も取り立ててかつてと如実に違う点がないあたり、お互い様といえなくもないがそれはそれ。
紙袋を抱いて待っていると、少し早足でミオが姿をあらわす。
「ごめん、遅くなって」
「大丈夫。さっききたばっかりだから」
にこりと微笑んでからオスカーはミオの方へ一歩進み出た。
「これ、バレンタインのお返し」
その言葉と共に紙袋を差し出して、ミオの手に握らせる。ミオの方は予想もしていなかったのだろう、呆然と驚きの表情を見せるばかりだ。
「見てみてもいい?」
「どうぞ」
促す言葉を受けてミオはゆっくりと紙袋の中を覗き込む。
そこにあったのは赤、白、ピンク、オレンジの四本のバラが束ねられた控えめな花束だ。
「昨日歩いてたところに花屋があってさ、ミオはこういうの好きかもなぁって思って」
そんなことを言ってオスカーは楽しげに笑う。
この花たちには彼なりに込めた意味があったが、それは告げずに。
何故だろう、それを伝えるかどうか自体が瑣末なことに思えた。
この時間、この瞬間こそが、奇跡のようでまるで贈り物のように思えたから──かもしれない。