刻限が迫る。
目の前の君は黎明を越えた先に至ることができない。
それは決められたことだ、と君は諦めた顔で笑う。
「なんで、そんな顔するんだよ」
ただ純粋に悔しくて、悔しくて悔しくてたまらない。
本当は交わるはずのなかったはずの関係に戻る。それは自然なことのはずだが、僕にとってはこの上なく不自然だ。
「そっちこそ……なんて顔をしているんだい」
きっと僕は今、君のいう通り酷い顔をしているんだろう。それはそうだ。
だって君との別れが、こんなにも悲しくどこまでも辛い。だから僕は言葉一つすら、返せなかった。
「この瞬間からはいなくなるが、存在が失われるわけじゃない。大丈夫、いつかまた会えるさ」
気休めにすらならない。無力感が増すばかりだが、受け止め受け入れる。だって、そうしか出来ないじゃないか。
──君がいなくなることは、もう決められているのだから。
「わかった……。けれど」
わがままを言おうとも、その時はもう間もなくやってくる。
それならばせめてと、僕は君の手を握ったんだ。君の存在を、しっかりと感じていたかった。
君は驚いたようで視線を向ける瞳は大きく見開かれている。
けれど僕の手を握り返してしっかりと指まで絡めてくるのだから、君の真意がどうにもわからない。
本当は、どう思っているのだろうか。
尋ねたところで返答があるとは思えない。君はそういうヤツだ。
互いの手を握り、ただ肩を並べる。言葉はないが、この瞬間を惜しむような空気はあった。
黎明からその先へ空は向かう。刻限だった。
「また会おう」
その言葉と泣きそうな笑顔の余韻だけを残して、君は消える。
手にはまだ温もりの名残が残っていた。
