進むことへの重責(スレミク)

 野営を決め、日も暮れたあとのことだ。あたりはすっかり暗く、松明の小さな明かりだけが頼りだった。
 しかし、スレイとしてはイズチで暮らしていた頃と大して変わりはなく、それは他の仲間とて問題にはしていないようだ。それぞれ思い思いの一晩を過ごすべく、自由に時間を使う中でスレイはぺたりと地面に座り込みながらぼんやりと松明の炎を見つめていた。
「スレイ」
「ミクリオか」
「こんな所に居たんだね」
 自身の元にやってきた幼馴染の姿を認めて、スレイは笑顔をうかべる。ミクリオの方も小さく笑い返してから、当たり前のように隣に腰をおろした。
「どうかしたのかい?」
 問い掛けるミクリオにスレイは、なにもないよともう一度笑って見せるがその姿は心なしか弱々しく見える。
「それで誤魔化せると思ってるのか?」
「やっぱ、ミクリオには隠せない……か」
「なめるなよ?」
「悪かったって」
 ミクリオの言葉にスレイは根をあげて降参したと言わんばかりに小さく両手を上げた。浮かべた笑顔は苦笑いで、自分自身に向けた自嘲の表情だ。
「今はみんなも近くにいないし、話してみなよ」
「……」
 菫色の瞳に心配の色濃く刻みながらミクリオはスレイに言葉をかけるが、スレイは押し黙ったまま視線を下へと落としてしまう。しばらく無言の間が続いたが、スレイはやはり口を開かなかった。
「スレイ……」
「……どうしたらいいか、分からないんだ」
 やっと重い口を開いたスレイは、緑色の瞳を不安げに揺らす。珍しい幼馴染の姿にミクリオは目を見開いた後、そっと彼のことを抱きしめた。
「ゆっくりでいいよ」
「……頭では分かってる、メーヴィンの伝えてくれたこと。……けど」
 スレイはミクリオに抱きしめられたまま途切れ途切れに、自分の中の気持ちを整理するようにぽつりぽつりと言葉を吐き出していく。その一言一句全てを聴き逃すまいとミクリオは必死に、スレイの言葉に耳を傾け続けた。
「怖いんだ。みんなを失ってしまうって、そう考えたら……これでいいのかって……みんなといるときはいいけど、さっきみたいに一人になるとつい……な」
 再びスレイが浮かべた苦笑は自嘲と言うよりは困った時のそれで、言葉を吐き出したことによって多少はすっきりとした様子だ。抱きしめられるままだったスレイだが、ミクリオの背中に手を回すと首筋に思い切りよく顔を寄せてありがとうと消えてしまいそうな声で告げる。ミクリオはスレイの背にまわした腕に力を込めて、どういたしましてと言葉を返すと子供をあやすようにトントンと背中を叩いた。