物心ついた頃から、大切にされた覚えなんてない。物心つく前からずっとそうだったんだろう。
いつもいつだって、たくさんの音が俺の耳には響いていて、これは何の音だろう、これはどこから聴こえるのだろう、そんな疑問ばかりが俺の考えを支配していた。
初めのうちはそれは、外からの音なのか内からの音なのかも判断がつかなくて、ずっと頭を抱えて耳を塞いでいたりもしたものだ。しかし、そんなことをしても何も変わらない。
泣き喚けば、周りの人には冷たい目で見られ、うまく立ち回れなければその日の食事にも寝床にもありつけないのだから。
花街の片隅にいた時は、子供がいるというだけで疎まれた。奉公に出されても俺はすぐに失敗して、折檻を受ける。寝てる間にも聞こえている音を覚えていると知れれば気味悪がられて放り出され、年の近い子供と遊びたくても、あからさまな拒絶の音と共に逃げられた。
本当は誰か、たった一人で良いから俺を見て欲しかったし、愛して欲しいと思わなかったと言ったら嘘になる。けど、そんな途方もないことを考えたところで現実になるとも思えない。夢を持っても叶わない。叶うはずなんてない。
だって俺には親もいなければ愛してくれる人もいない、何も持っていない、ただやたら耳が良いだけの子供でしかないんだから。
望んでも望んでも叶わないのなら、望むくらいは許してほしい。だって迷惑がかかるってわけじゃないんだからさ。
愛されたいし、その実感は味わってみたい。それは本当の気持ちだけれど、諦めるからその代わりに信じさせてよ。淡くて良い、すぐなくなって良い、だから夢を見させて欲しいんだ。せめて、それくらいは良いだろって。
そんな風に生きてきたのに、何?
どうしてこんなにあたたかくお前は俺を肯定してくれるんだよ。
勘違い、してしまうだろ。
