言い入れるは切実たれと(tnzn)

 ――神様、俺、明日死ぬ? 寧ろもう死ぬの?

 善逸は目の前の状況に、無意識に死を覚悟しそうになる程には混乱していた。実際はそんなことなど一つもない、側から見れば幸せを願い祈られるようなものなのだが、善逸本人はそれは自身に不似合いだと思い疑わない。
 彼の目前には炭治郎の姿があり、その表情はこの上なく真剣で切実なものである。その手に握られた淡い紫色の花束は、ぎこちない動きで善逸へと突き出されていた。そして、真っ直ぐ善逸を捉えるその視線は、彼に居心地の悪さと不似合いさを強く強く感じさせる。
 炭治郎の言葉は嬉しい、とても嬉しいものなのだ。しかしそれを受け取るべくは自分ではない、きっと他にいるはずだとも思ってしまう。そして挙げ句の果てには、みっともなくその場から逃走を図るが努力も虚しく炭治郎に壁の方へずいずいと追いやられ、終いには壁に背中を預けることとなってしまった。
 どん、と花束を握っていない手で炭治郎は壁に手をつく。その手の圧によって、善逸はまるで縫いとめられたかのように動けなくなってしまった。
 善逸がと向ける視線は震えて、涙ぐんだ瞳にはその先に居る炭治郎の姿が映る。炭治郎は今の自分をそこから少し客観的に見つめて、小さく笑った。何をそんなに恐れることがあるというのだろう、どうして怯えることがあるというのだろう。彼の想いはただ善逸のためだけに、ひたすらに愚直なまでの想いを貫き、その想いは果てることなどありはしない。そしてそれを善逸以外に向けることは有り得ない、例外ひとつとして有り得ないのだ。
 一度は壁についた手を払い、今にも溢れて落ちそうな善逸の瞳に止まる涙をさらりと拭った。善逸の瞳は大きく見開かれ、驚きを隠すことはない。しかしそんなことなどお構いなしに、炭治郎は善逸の目の前に跪きその手を差し伸べる。

 ――俺はこの身が果てるその日まで、お前を愛し変わらないと誓う。だから、俺と共に生きてくれ。