花菖蒲

「──僕を信じてもらえるだろうか」
彼の青空のごとく鮮やかな瞳は、真剣そのものだった。
信じなかったことなど、出会ってこの方一度だってない。いつだって最善を尽くし、死力を尽くし、自分だけでなく誰かのために全力な彼だからこそ、共にいた。
そんな彼からの言葉を信じないなんて、あるはずがないのだ。
「もちろん」
口からは自信に裏打ちされた言葉を発しているにも関わらず、瞳には涙が溢れる。
これは彼のやりたいことへ続く道、そのために今しばらくは離れることになるということを頭では理解しているのだ。
けれど、感情は純粋に彼と離れることを〝寂しい〟と感じている。
彼は最愛の人だ。当然、会えぬ日々は寂しくてつらくてたまらない。
そのことを察したのだろう。優しく彼は瞳に溜まっていて涙を拭い取った。
「つらい思いをさせることを、どうか許してほしい。しかし必ず、戻って君をもっと幸せにすると約束するから……笑ってくれないか」
「……はい」
その決意と願いを受けて、微笑む。きっとこれが最善で、最良の選択だと信じて。
変えた表情に応えるように、彼が恭しく手をとってから手のひらとそして指先に軽く口付けた。
「次に会える時を楽しみに頑張るよ。また、連絡する」
そう言って彼は今までの真剣な表情とは打って変わって、まるで子供のように純粋で屈託ない笑顔を向ける。
別れ際、天つ空に映えるその姿は希望の象徴のようですらあった。