聖夜の夜の輝きと(スレミク)

「なぁなぁ、ミクリオ」
 授業が終わり教室を出ようとしたところで、スレイは声を弾ませながらミクリオに呼びかける。視線を向けたミクリオの視界に飛び込んだのは、瞳をきらきらと輝かせるスレイの姿だ。
「どうしたんだい?」
「今日、寄りたいところがあるんだ。付き合って欲しいんだけど、どうかな?」
「うん、構わないよ。どこに行くんだい?」
「着いてからのお楽しみ! 行こう!」
 スレイは待ちきれないといった様子で、ミクリオの手を掴むとそのままぐいぐいと引いて廊下へと出ていく。
「待ってくれスレイ!」
「ん?」
「手を引かなくても大丈夫だから」
 ミクリオの言葉にスレイは首を傾げて見せると、勢いで掴んでしまったらしいその手を慌てて離すと大慌てでごめんと謝った。
「いや、いいけど……」
「ほんとごめん……つい……」
 申し訳なさそうに視線を落としてスレイは、うなだれながらもミクリオの様子をうかがう。その様子を見てミクリオはあからさまに大きな溜息をひとつしてから、眉を下げながら笑みを浮かべた。
「行こう? 連れて行ってくれ、その目的地に」
「うん!」
 ミクリオの言葉にスレイは、再び瞳を輝かせて頷くと廊下を歩きはじめる。スレイの後ろのミクリオも続いて歩きはじめた。

 スレイはいつもの通学路を外れて歩く中、少しずつ日は暮れていく。ぽつりぽつりと街に光が灯り始める。季節柄、日没の時間が早くなったことも手伝って、夜の訪れはもうすぐそこまで来ていた。
「なぁ、スレイ。まだ着かないのか?」
「もうすぐだよ」
 街中をずんずんと進んでいくスレイをミクリオはひたすらに追いかける。その間にも刻一刻と夜の訪れが迫り来る。しかし、それに反して人の数は増えているように見えた。
 その様子を目にして、ミクリオは今日は何かの日だったかなどとぼんやりと考えをめぐらせながらも、歩む足は止めずに進む。一方スレイは前を進みながら、盛大に鼻をすすった。
「大丈夫かい?」
「うん。寒くなってきたな……ミクリオは大丈夫?」
「ああ、僕は問題ないよ」
 真っ直ぐ見つめるミクリオの視線と、振り返りながら向けるスレイの視線がぶつかる。二人とも視線には心配の色が帯びていて、同じことを考えていることに気づくとどちらからともなく小さく微笑んだ。すっかりあたりには夜の暗闇が降りてきていたが、街灯や建物の灯りが夜の中に街や人を浮かび上がらせていた。
「ここだよ」
 スレイは美しく煌びやかにライトアップされた、大きく開けた道を指差すとミクリオの視線は一瞬でそちらに奪われる。道の両脇にある街路樹は白や青、橙など色とりどりの電飾に彩られて光の花が無数に開いているかのような美しさがそこにはあった。
「これを見にきたのか?」
「そうだよ。ミクリオと一緒に見に来たかったんだ」
 その言葉にミクリオは赤面しながらスレイをの方をちらりとうかがう。スレイは柔和な笑みを浮かべながらも、うっすらと頬を紅潮させて気恥ずかしさをみせた。するとスレイは、ミクリオの手を取り上着のポケットへ二人の手をねじ込むようにして入れると、ポケットの中でミクリオの手を握りしめる。
「スレイ!」
「こうしたら見えないし、寒いからさ……いいだろ?」
「……仕方がないな、少しだけだぞ」
「やった」
 ポケットに入れていない手で小さくガッツポーズをしてから、スレイは嬉しそうにミクリオへ笑いかけた。ミクリオは顔を赤面させたまま、笑い返すと
「メリークリスマス」
と小さな声で呟く。その近くの人間にも届くか届かないかというような小さな声は、スレイの耳に届き
「メリークリスマス!」
とスレイの口からも同じ言葉が返された。言葉を交わし手を繋いでいる方の肩を寄せると、もう一度互いが互いに笑顔を向ける。
 幸せが溢れる道を、美しい光で飾られた街路樹もこの日を祝っているかのようだった。