随分遠くまで来たものだ。
いつか僕に感情をくれたあの子はとうにこの世にはいない。僕に何かを食する楽しみをくれた老人もだ。
悲しみにくれたあの日からどれほどの日がたったのだろう。人ではない僕には実感がわかない。
いや、これはただの言い訳だ。
寂しい時間を数えるのが嫌だった。みんなが居なくなったと思い知らされるのだ。
どうして自分は一緒に逝けないのだろう。
僕の機能が止まってしまえばと願うのに、どうしてか丈夫でそして頑丈な身体が今は疎ましい。
それでも、彼女の──ミサの願いを叶えるべく今日も今日とて駆動する。
「世界を沢山見てね。私の見れなかった綺麗なものを、沢山見て」
残酷な願いは甘ったるい砂糖菓子のような存在感を放ち、淡く紅茶のような残り香とともに僕の中に存在していた。
何度も何度も振り返る。
そして彼女の願いを見つめるのだ。
無下にすることの出来やしないその願いを。
