祝いの言葉は日の出に続き(tnzn)

 朝の空気が清々しい。炭治郎は一人、縁側に続く障子を開き大きく伸びをしながら、深く深呼吸する。
 朝焼けの淡い色の空を見あげながら、縁側まで歩きゆっくりと腰を下ろした。時間が早いからだろうか、あまり人の生活する匂いは感じない。もう少しすると、人々が起きだし色々な匂いが届くだろう。そのどちらの匂いも炭治郎は好きだった。日々を生きていると、強く感じることが出来るからだ。
 しばらくぼんやり空を眺めていたが、部屋からごそりと音がする。炭治郎は鼻に届いた匂いで、起き出しただろう人物を理解した。
「おはよう、善逸」
「…はよ」
 寝ぼけ眼を擦りながら、善逸はのろのろと四つん這いで縁側までやって来る。
「眠たければ、もう少し寝ていればいい」
「ん~」
 炭治郎の言葉に意識がまだ寝起きでぼんやりしているのか、はっきりしない声を返しつつ縁側に腰を下ろした。
「善逸?」
 結局、炭治郎の隣に座った善逸は何を言うでもなく空を見上げる。名前を呼んでみたところで答えはない。
 しかし匂いはどこか緊張を感じさせ、目の前の姿との落差に炭治郎は首を傾げる。
「どうかしたのか? 善逸」
「誕生日……」
「え?」
「確か、今日が誕生日だって言ってただろ……? おめでとう」
「あ……」
 善逸の言葉に炭治郎はハッとした。以前、誕生日の話をしたことがあったことと、それが今日であるということにだ。
「覚えていてくれたのか」
「……何でお前が忘れてんの」
 口をとがらせてから善逸は、緊張を返せもっと喜べと小言を言い始めるが、頬まで真っ赤に染まった様子と鼻をくすぐる香りは照れの感情ばかりを感じさせる。
「ありがとう。善逸」
 あまりの嬉しさに最初こそ呆けてしまった炭治郎だったが、感謝の言葉とともに破顔した。その様子はいつも見る笑顔の何倍も柔らかく照れを帯びたもののように見える。
「……どういたしまして」
 眩しいほどの炭治郎の笑顔に、善逸は思わず視線を逸らさずにはいられなかった。