知らず知る君を/知らず知る君へ(tnzn)

 脳裏にちらつくのは鮮やかな黄色、そして光を受けて輝く金色だった。

 何を夢に見たのかは思い出せない。ただ、いつもの布団の上で目を開いた時に自然と涙がこぼれた。
(どうして泣いているんだろう、俺)
 当然の疑問だった。記憶の整理の定着を脳が行う、それだけに過ぎないのだとしても感情が伴うならば、疑問を抱かずにはいられない。
 その答えは残念ながら得られることはかなわないが、何故か鼻の奥に少し残っている嗅いだことのない、しかしどこか懐かしい気がする香りが優しく凛と香る。
 きっといるはずのこの香りの主に、会いたいとどうしてか強く強く思ってしまう。
 魂が求めているようだった。

 脳裏にちらつくのは黄昏のような意志のはっきりした瞳と、熱烈なまでに情熱的な視線だった。

 夢の記憶はない。けれど余韻はとてもあたたかく幸せでありながら、どこか切なさも感じさせて複雑な感情を抱かずにはいられない。
(何の夢、見てたんだろ……)
 幸せと切なさを同時に感じる状況が想像できず、隔たれてしまった記憶に手を伸ばしたくて堪らなくなる。それでも、伸ばした手が何かをつかみ取れるはずもなく、ただただ口惜しさを噛み締めた。
 何故だろう耳の奥に残る、どこから来たのかも定かではない泣きたくなるような優しい音が存在を主張する。
 初めて聴くような、ずっと前から知っているような、そんな音の主に無性に会いたいとやはり手を伸ばした。
 魂の知る誰かはいずこか。