それはひょんなことだった。
ステージの上で、ほんの一瞬だけ壮五がよろけたのだ。とは言っても、致命的なものではない。
用意にふみとどまることの出来るだろう、そんな軽いもの。
それでも環の身体は反射的に動いて、壮五を支えることが出来る位置で万全を期した。
観客からは悲鳴にも似た、それでいて黄色い声が飛ぶ。おおよそファンサービスとでも思われたのだろう、好都合だった。
決まり通りだと言わんばかりに全ての物事は進行していく。
その中で環と壮五の視線がぶつかった。
ほんの少しだけ眉を下げて笑って壮五は口だけを動かす。
──ご め ん ね。
環はその言葉に口をとがらせた。
