当たり前のようにそこにあって、でもそれは次の瞬間には壊れてしまいそうな、そんな儚げな印象を受ける笑みで伏し目がちに炭治郎に向けられる瞳は琥珀にも似た黄色だった。
咲き乱れる藤の花の中、炭治郎は花に目をくれることも無く向けられる黄色の視線を受け止める。
「善逸?」
どうしたらいいものか分からなくなり、堪らず目の前の視線の主である彼の名前を口にした。善逸は呼び声に答えることもなく、ただ黙って炭治郎のことを見つめる。
「なぁ、善逸? どうしたんだ?」
鼻である程度は察することが出来ても、こういった機微への疎さはあまりにも炭治郎らしすぎて善逸は黄色の瞳を瞑り破顔した。
「え? 俺は何かおかしなことをした……のか?」
困惑しきりの炭治郎に対し、笑い声をもらしながらも善逸は問いかけられた言葉に違うと返す。それすらも炭治郎からしてみれば不思議な光景で、顎に手を当て首を捻るくらいしか出来ることがない。
「悪かったよ。でも、炭治郎らしいなと思ってさ」
「俺らしい?」
聞き返される声に、善逸は小さく何度か頷いて肯定する旨を伝える。
「お前は真面目だよなって話!」
いつもと変わらぬ様子の笑顔を向ける善逸に、先までの黙って視線を向けていた様子は感じられなかった。
――あのいつもと違う甘い匂いはなんだったのだろうか。そんなことを頭の隅でかんがえながら、炭治郎は自信に向けられた笑顔に応える。
その間に、善逸は必死に自信に突如芽生えてきた恋慕の感情に身悶えつつもひた隠しにしていたが、自身の困惑に気を取られた炭治郎には知る由もなかった。
