溢れてもなお君が好き

気持ちが溢れる、そんな体験をしたことがいくらあったろうか。
彼は目を細めた。その表情は穏やかで柔らかいものだ。
大切な人がいる。たまらなく愛しくて、たまらなく幸せな気持ちにしてくれる人だ。
〝大切〟の意味を知るのに時間はかかってしまったが、彼女が笑顔になるだけで自分は嬉しくなるのだと知って、彼女の存在に落ち着きと癒しをもらっているのだと知って、気持ちは自然と口からこぼれて落ちる。
──君は、どんな顔をするだろう。
彼の目の前に立つ彼女はみるみるうちに頬から耳に至るまで真っ赤に染め上げた。
それでも彼がこぼした言葉に嬉しそうに微笑む。
その姿をも愛おしく、彼もまた微笑んだ。