御剣渡の気持ちの再現

嗚呼、どうして──どうして同じ顔の二人に、こんなにも不公平な人生をお与えですか。
神様どうか、教えてください。

恐怖と信用を両立させる日が来るとは思わなかった。
怖いんだ、本当に怖かった。
けれど嘘偽りのない、ある意味での真っ直ぐさも確かにあって、どうしたらいいのかわからなくなる。
でも……信じたいって思ったんだ。

綺麗、その言葉がしっくりくる。一番、しっくりきた。
何だかとんでもない人なんだろうなという面と、自分に近い面が交錯する。
不思議な人だな、とも同時に思う。
けど、この人は裏切らないし誠実であり続けるのだろうな。

不思議だと思う、不可思議だと思う。
天は二物を与えずなんて言葉は、大多数に向けた言葉だ。
だってオレは例外を知ってる。例外中の例外を。
目の前の特別、対してオレはその他大勢の一人だ。平凡、一般、無個性。特別の引き立て役なのかもしれない。
人生の主役は自分なんて考えは幻想だ。
オレはオレの人生を生きていても、主役は隣にいる。オレと同じ顔をしていても、別の存在。
だからといって、自分の手にはなにもない。何ひとつありはしない。
望むものの全ては目にする前にこぼれ落ちて、ともすればこの手は届くこともなく、あいつの手の内だ。
すごいと知っている、敵わないとわかる、だからこそ何も出来ない。
何者にもなれないオレは不可思議ですらないんだ。

特別、それは望んでやまないものだった。
例えおぞましくても、世界の敵になるとしても、何者かになれるならと思ったことさえある。
けれど実際、他人とは違う能力を手にして思うのは、案外と主観は何も変わらないということだった。
あんなに狂おしいほどに求めていたのに。呆気ないものだ。
バケモノになってしまったのだという認識、朧にも残っていない記憶、少しだけ残った感情、第三者からの伝聞。
ドラマチックには程遠い。
自分らしいといえば、あまりにも自分らしくて反吐が出る。
でも覚えてる。
──助けたい。
あの気持ちは嘘じゃない。
彼女に抱いた思いはオレだけの、ものだ。だから、待つんじゃない──手を、伸ばす。
これだけは曲げていけない、捨ててはいけない。
オレのことを忘れてしまっても、何も覚えてやんていなくても、オレの中の何かが変わるわけじゃないから。