年明けを告げる鐘の音と夢の続き(スレミク)

 カウントダウンの声が街中に響く。街全体の熱に浮かされたような落ち着きのなさは、期待と希望を胸に抱く明るいものを感じさせるものだ。スレイとミクリオの姿は、多くの人が集まる街の広場にあった。街の住民達と同じく彼らも期待と希望に満ちた表情で、年をまたぐその瞬間を今か今かと待ちわびている。カウントダウンの数字は着々と減り、ついにゼロを告げた。
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとう!」
 新年を迎えたまさに年明けの瞬間、二人は競い合うように目出度い挨拶の言葉を発する。ほぼ同時に声を出したが、心なしかミクリオの声が早く上がったようだった。
「今年は僕が先だな」
「ちぇ」
 ミクリオの満足げな声に対してスレイは口を尖らせる。毎年、暦が新しく新年を迎えるその瞬間に、二人はいつも肩を並べてどちらがより年明けと共に挨拶を出来るかを競っていた。競い合う意味もないし、不毛といえばそれまでなのだが、どうにも習慣化されてしまったそれは当たり前のものとして今年も二人の間で行われている。
 二人が身を置く街は、浮き足立った明るい騒がしさが広がっていた。人間も天族も分け隔てなく、再びやって来た新年の訪れを喜び合う。やってきた平和を心底迎えているようでもあった。
 二人で旅をはじめてどれくらい経っただろうか。すっかり二人で遺跡を巡ることが当たり前になった、そんなスレイとミクリオも街の住人達と変わらず新年の訪れを彼ららしいやり方で祝っているという訳だった。
「去年は沢山の遺跡を回れたなぁ」
「そうだね、今年も多くをみて行きたいね」
「だな!」
 二人は相変わらず二人の夢を追いかけている。遺跡を巡り、遺跡を探し、二人の目は輝いていた。周りの人々も口々に希望と期待を語り合い、肩を組み、杯を酌み交わして新年の訪れを祝っている。平和を象徴するような様子に、スレイは満足げに目を細めた。
「スレイ」
「うん?」
 呼び声にスレイが振り返ると、ミクリオは愛おしそうな視線を向けている。スレイの思いを感じとったのだろうミクリオの様子に、スレイは照れ臭そうでいて嬉しそうに笑ってみせた。そのまま勢いで隣に座るミクリオのことを抱きしめる。以前に比べ成長を遂げ逞しい身体つきになったミクリオのそれを思い切り抱きしめながら、耳元にスレイは口を寄せた。
「今年もよろしくな、ミクリオ」
 息がかかったのか、くすぐったそうに身をよじってからミクリオは幸せそうな笑顔をうかべる。
「ああ」

 ——今年もまた、彼らの夢は続く。