夢に見た八雲

窓越しに青い空を見上げる。
抜けるような青い空、世間一般の人間はこれを見るだけで少なからずいい気分になれるような、雲ひとつない快晴だった。
八雲はただ、いつものように空を見上げる。仕事のないときは大抵この場所──恒人の店──へやってきては、少し離れた窓際の席に腰を下ろしているのだ。
ここにいると緊張やら息苦しい何かを感じることもなく、ただ穏やかに時間を過ごすことが出来る。それがこの場所へ足を運ぶ理由だった。
静かに時間がゆっくりと流れていく。騒がしくもなく、かと言って緊張を帯びるようなこともない。
それは八雲にとって日常を、そして平和を感じる瞬間だった。
「八雲」
恒人の呼び声に視線を空から店の中へと移す。
当然ながら声の主である恒人の姿があり、八雲の方へと視線を向けていた。
いつものように交差する視線、それもまた日常の一頁だ。
その声と視線に「なに?」と八雲は声を返す。穏やかな微笑みをたたえながら。