君求む、ただ不足に君求む

「キスしてもいい?」
今日、そう求めたのは八雲の方だった。
「だめなわけないだろ。俺もしたいし」
嬉しそうに笑う恒人に、八雲は顔を寄せる。
最近は特に恒人が嬉しそうに笑うことが増えた。前よりもずっと、嬉しそうに笑うのだ。
八雲としてはそれが嬉しく、喜ばしく、たまらなく幸せに思える。
噛みしめるようにゆっくりと自身の唇を恒人のそれにそっと重ねた。引き寄せられるかのようなその動作は、本当にただ互いの唇が重なり触れさせるだけ。
しかし唇から伝わるあたたかさは、二人を確かに満たすと同時にもう少しと、まだ足りないと、そんな渇望も抱かせる。
「ごめん、足りない」
小さく呟いた八雲が今度は恒人にかぶりつくようにして再び口付けた。腰を下ろしているベッドが音を立てて軋む。
恒人は八雲の言葉に応えない。ただ、八雲の口付けに自身の舌を絡めて応えた。それだけで十分、全てが伝わる。
二人は互いの存在を貪るように夢中で食らい合った。舌を絡め、唾液を交わし、長い長い口付けは甘く淫靡な水音とともに続く。
次第に恒人の身体からは力が抜け、表情もゆるく蕩けたものへと変わり始めた。それを見て八雲はゆっくりと恒人の身体をベッドの方へと傾け、押し倒すような格好になりながらも口付け続ける。
恒人が小さく声吐息を漏らしながら片方の手をゆるゆると八雲の方へとのばした。
手を握ってくれ。
そう強請り、明確に請うその手を八雲はしっかりと握る。指を絡め握りしめながら、口内では何度目かの唾液を交わしゆっくりと唇を離した。
二人の間には薄く銀糸が引き、甘い時間を物語る。
どこか恍惚とした八雲と恒人の視線がぶつかると、互いに微笑みあってから再び引き合うように身体を寄せた。