「ミオ、すごく眠たそうだけど……まだ寝ないの?」
そう尋ねるオスカーの視線の先では、船を漕ぎながらも必死に眠気と戦うミオの姿がある。
普段であればこんな状態まで至ると意地を張らずに寝るものなのだが、今日のミオはやけに必死だった。
「もうちょっと、もうちょっとだけ……」
眠気に目を擦りながら、ミオはオスカーに主張する。
何かあっただろうか。オスカーは少し思案して答えらしきものに思い当たる。
明日は自分の誕生日であるということ、こうして一緒に暮らす前は誰よりも早くメッセージを飛ばして祝ってくれていたのがミオだったということに。
そのおそらく事実だろうことは、オスカーの表情に自然と柔らかな笑みを浮かべさせるには十分過ぎた。
「……オスカー?」
ミオは眠気に負けそうなまぶたを押し上げながら首を傾げ、オスカーを見つめる。
「ベッドの方いこ?」
「ベッド行ったら寝ちゃうから……!」
「大丈夫、一緒に起きてよう?」
「……うん」
穏やかに言葉を紡ぐオスカーに対し、ミオはひとつ大きく頷いて見せた。
いつものように二人でベッドへと向かう。二人一緒に眠る大きめのベッドは、普段と変わらずオスカーとミオを迎えた。
そしてやはりいつものように二人は、ぴたりと身体を寄せて半身を起こした格好でベッドの真ん中に腰を下ろす。
あと少しで日付が変わる、刻々と近づくその瞬間をミオは眠気と戦いながらもどこか落ち着きなく待っていた。
そしてオスカーはそんなミオの様子を静かに見守っている。
二人が肩を寄せお互いの体温を感じながら待つなか時間は進んでいき、ついにその瞬間が訪れた。
アナログ時計の長針と短針そして秒針がまっすぐ上を向いて重なる。
「オスカー、お誕生日おめでとぉ」
少なからず眠気を帯びた若干間延びしたミオの声がオスカーがこの世に生まれ落ちた日を祝い、言葉を紡いだ彼は満足そうにゆるく微笑んだ。
「うん、ありがとう」
「ちゃんと、お祝いの用意してるから……」
「うん。楽しみにしてる」
オスカーの返す言葉に満足したのか、ミオはそのまま眠りへと落ちていく。
そんなミオの姿を愛おしそうに見つめながら、オスカーは幸せを噛み締めた。そしてすっかり夢の世界へ行ってしまったミオを囲い込むように抱きしめて、オスカーもまぶたを下ろす。
夢も明日も、いいものだ。二人一緒ならばそうに決まっている。
そんな確信を胸に抱きながら。
