君のことが(tnzn)

「もっとこっちを見てほしい……のは我儘なんだろうな」
 ボソリと善逸が呟いた。
 それは彼らが二人、テレビを見ていた時だ。特に興味がある訳でもない恋愛もののドラマ、シーンはその時に修羅場を迎えていた。
 女性が男性に申し訳なさそうに、嫉妬の感情を口にしている。その時の言葉が「もっとこっちを見て欲しい」だった。
 炭治郎はテレビよりも善逸の方に意識を注力する。得意の嗅覚で様子をうかがってみれば、善逸からはどこか寂しげな匂いがした。
「善逸」
「ん〜?」
「善逸は、もっと自分の方を見てほしいと思っているのか?」
「んえ⁉︎」
 炭治郎の問いかけに善逸は思わず間抜けな声をあげる。
「俺は善逸が望んでくれるなら、ずっと善逸のことを見ているよ」
 炭治郎の言葉に善逸は 目を見開き、次には赤面し、最後には顔を逸らした。
「……お前、そういうとこだぞ……」
 そう口にしながらも隣に座る炭治郎の肩に、善逸はそっと自身の頭を預ける。
 炭治郎もまた、善逸の方に頭を寄せた。