梅雨の晴れ間が空を明るくする。
お互い社会人として慌ただしくも充実した日々を送るオスカーとミオだったが、同じ家に住んでいてもどうにも生活のリズムが噛み合わない日が増えていた。
それでも可能な限りは時間を合わせ、顔を合わせを繰り返してはいたのだが、久々に休みが重なった今日は二人にとっては大変喜ばしい。
予報は雨だったが、それでも出掛けたいねと話をして家を出る時に雨空は晴天に変わった。
偶然と言えば偶然だが、二人にとってそれはまるで奇跡のような瞬間で、自然と二人は笑顔で見つめ合う。
特に目的はない。ただのんびりと街を歩き、ゆっくりと二人で色んな場所で時間を過ごす。それだけで世界はきらきらと輝いて二人の目には映り、満たされる感覚が確かにあった。
「あ……」
そんなあてのない道すがら、小さな声を上げたのはミオだ。
「どうかした?」
尋ねながらオスカーがミオの視線を辿る。そこには花が咲き緑が美しいガーデンアーチを持つ場所があった。アーチの下には純白のドレスに身を包んだ花嫁と、同じく純白のタキシードに身を包んだ花婿がいる。
彼らは集まった人々からフラワーシャワーで祝福を受けている最中であり、その姿は絵に書いたように美しくそれでいて幸せに溢れていた。
その様子にミオの視線は釘付けになっており、何かしら思うところがあるらしいことは明白だ。
「ね、ミオ?」
「えと……なに?」
呼びかけられて慌ててミオが視線をオスカーに向けると、そこにはなんの気ない視線がある。
「……結婚式、やりたい?」
その問いにミオは一瞬呆然としてから、弾かれたように何度も何度も首を横に振った。
「ううん、違うよ」
まさに先日、そんな話をしたばかりなのだ。自分たちは今後どうしていくのか。結婚という形を見すえて共に過ごすのか、そうではないのかという話を。
結果としては結婚にこだわることなく、共に生きて生きたいという話をしていたのだ。
だからこそミオの言葉はその話と変わりないものある、とはっきり分かる。しかしどうにも今の否定の言葉は、思うところがあるということを如実に伝えてくるほどの慌てふためく様子が感じられた。
「……ミオ」
改めて今度は真っ直ぐ、オスカーはミオを見つめる。悪気なくじっと見つめてくるどこまでも真っ直ぐな視線に、ミオは視線をうろつかせた。
「あ、あのね……」
おずおずと口を開くミオの次の言葉を、オスカーは静かに待つ。
「……白いタキシード、オスカーが着たら格好良いんだろうなって……思ったら、ちょっと見たいなって……なって」
そう白状するように言って、ミオは恥ずかしそうに目を伏せた。
オスカーは瞳を大きく見開いたあと、今度は目を細めて穏やかに微笑む。
「そっか。ミオが言うならきっとオレ、似合うんだろうな」
少しおどけて笑った後に「けど」と言葉を区切り続けた。
「ミオも似合うと思うよ?」
何が、とは限定しない言葉は広く大きくミオを肯定する。
「そう、かな」
照れくさそうにわらったミオに、オスカーはもう一度笑顔を向けてから口を開いた。
「もちろん」
その場から歩き出しながら、二人の話題は貸衣装を使ってフォトセッションの出来る場所のことへと変わる。
この気持ちをそのままに、思い出を残すのも悪くない。と。
