二人ならば(スレミク)

 衣替えを学園から通知され、ひと月ほどになった。衣替えの初日やその周辺はさすがに暑い日もあり、生徒達は不服を口にしていたものだ。しかし、次第にそれも減っていき気がつけば紅葉を越え、出歩く人々の出で立ちも一枚また一枚と重ね着をする人が増えていく。
 テレビからは木枯らしやら霜やら、初雪のたよりなど日に日に冬へと近づいていく足音が聞こえていた。

「くしゅん」
 登校途中のスレイと並び歩くミクリオが、控えめなくしゃみをひとつしてから咳払いをした。
「ミクリオ、風邪?」
「……いや、違うと思う」
 スレイの問いかけに、ミクリオはここ数日のことを思い出して、風邪を引くような要因があったか思案を巡らせてから、短く言葉を返しつつマフラーの巻き加減を整える。
「そ?……うぅ……それにしても今朝は寒いなぁ」
「うん。日に日に寒くなっていくな」
 ミクリオの言葉に返しを加えながらもスレイは、想定以上の寒さに身を震わせてから、たまらずズボンのポケットに手を入れた。言葉を返しながらミクリオも小さく身震いをする。季節の変わり目にありがちな、体感温度と実際の気温との差が大きい状況を如実に体感しながら二人は、朝の凛としていて凍えるほどではないにせよ確実に寒さを感じる空気と戦うほか無かった。
 朝練に参加する生徒の登校するほどの時間ではなかったが、始業前の予鈴に間に合うように登校するにしては少々早い時間であるせいだろうか。まだ暑さが残る頃や過ごしやすい季節であれば、同じくらいの時間でも多いとは言わずとも多少は学生の姿もあるものなのだが、それもこれも寒さが増してきたせいもあるのだろう。真っ直ぐ見通しの良い道にいて、二人の眼に映る限りではあるが通学路に同じ制服を着ている学生の姿は見えなかった。
「なあ、ミクリオ?」
 スレイの呼ぶ声に視線を向けながらミクリオは、次の言葉をただじっと待っている。
「おれ、手袋忘れちゃってさ。ちょっとだけ手を繋いでもいい?」
 さっきポケットにしまったばかりの手のうち、ミクリオの側にある手だけを引っ張り出して差し出すと、スレイは照れ臭そうな笑顔を浮かべた。
「あぁ」
 差し出されたスレイの手を取りながら、ミクリオは短く肯定の返答を告げて笑い返す。スレイは握られた手をそのまま引きずりこむようにして自身の手とともに上着のポケットへしまいながら、ミクリオの華奢な肩に自身の肩を寄せた。