ミルフィーユ

「わぁっ、見て見て!」
弾む声が隣で響き、声の主がそのいちごのような色の瞳をキラキラと輝かせながら指差す。
語りかけられた相棒とでも言うべきか、そんな存在である彼はつられるように指さされた先を見た。
「仔猫?」
目に映っているのは確かにふわりと柔らかそうな子供の猫以上でも以下でもない。しかし、予想していなかった存在に驚きの声が落ちた。
「うん! かわいい!」
いつも以上に表情をくるくると変えながら、彼は仔猫のもとへ近づいていく。猫の方は緊張や警戒をしている様子もなく、近づいてきた手を受け入れてされるがままになっていた。
「すごいな……僕はあまり動物には好かれない方だから、驚きだよ」
それは心からの関心の言葉だった。
「そう?」
応える声は目の前の状況を当然として、疑いのひとつも感じてはいないようだ。あまりにも違う目の前の存在がどうしようもなく尊くそして愛おしいものに思えてならなくなっていく。
心の奥がほんのり温かくなるような、そんな感覚。
見上げてくる彼と、仔猫の視線を一身に受けながら普段はあまり表情を変えることのないもう一人の彼の表情がたまらず緩んだ。