「ねぇ、マルタ……恥ずかしいよ……」
所在なさげにするエミルが纏うのは、いわゆる仮装の衣装だ。彼の衣装は狼をモチーフにしたもので、ワイルドさが重視されているのか肌の露出も多めだった。
彼の普段の服を考えると、露出度についてはそこまで問題ではないように思えたが、どうにもこのワイルドさというものには慣れない。
「もっと堂々としたらいいのに。かっこいいよ、エミル」
エミルの着替えを待ち望んでいたマルタの声は、いつもと変わらず彼を褒めた。期待以上の仕上がりでマルタとしては、この上なく満ち足りた想いを抱く。
彼の衣装もそうだが、今回の自身の仮装もなかなかの自信作だ。マルタはエミルの反応を待ち望みながら、その場でくるりと回ってみせる。
「ね、エミル。どう?」
マルタからの問いかけに、当のエミルは所在なさげに視線を彷徨わせた。文字通り目のやり場に困るような、いつもより大きく開いた胸元と普段とは真逆の色のドレスが、妖艶さすら感じさせて、どうにも落ち着かない。
「ちょっと、その……」
視線を右往左往させながら、エミルはもじもじと身体を揺らす。どうしたらいいのか、本当に分からなかった。
「ごめんごめん、困らせちゃったね」
純粋な気持ちから謝意の言葉を口にすると、エミルの表情がほんの少しだけ強張る。
マルタとしては正直な話、この姿をエミルに見てもらいたかったことが一番だ。その反応に興味があったのだと自分に言い聞かせても、困らせてしまったことにはやはりショックを隠せない。
それを感じ取ったのだろうエミルは、一歩マルタへと歩み寄ると屈託のない笑みを彼女へと向ける。
「上手く言葉に出来なくて、ごめんね。綺麗だよ? マルタ」
けど目のやり場には困っちゃうな、そう付け足したエミルは今度は困った風に頭を掻いた。
