多くの人が今か今かとその瞬間を待ちわびる。
カウントダウンの声が、熱気を帯びてにわかにあたりの空気が期待の色を帯びて行くのが伝わった。
その様子に釘付けになり、きょろきょろと辺りを見回しているのは伊之助だ。
「すげぇな、こんなの初めてだ!」
落ち着きのない様子で、辺りを確認しては一緒にこの場にやって来ている炭治郎と善逸に伝えている。おのぼりさんという言葉が、ここまでしっくりくることもなかなかないだろう様子に、善逸は思わず苦笑した。炭治郎の方は呆れた様子も見せずに、伊之助の主張を満面の笑顔で受け止めている。
彼ら――主に伊之助――が落ち着きなくはしゃいでいる間にもカウントダウンの声は響き、刻一刻とその数字は減っていた。
もうすぐ、その時がやってくる。
――3、2、1!
煌く飾りが吹き出し、新たな年の到来を告げる多くの音が鳴り響いた。
善逸は思わず耳を塞ぎながら、それでも聴こえてくる幸せに満ちた音に身を委ねる。
「善逸」
隣から自身を呼ぶ聴き慣れた声に、視線を向けると炭治郎がそこにいた。伊之助は少し離れたところにいて、目の前の光景にその視線を奪われている。
「大丈夫か?」
炭治郎の問いは主語こそないが、言わずもがな善逸の耳のことを指していた。
「大丈夫だよ。それよりさ、たんじろ? 先に言うことあるんじゃないの?」
笑いかける善逸に炭治郎も笑い返すと、そうだなと頷く。
「あけましておめでとう、善逸」
「あけましておめでとう、炭治郎」
新年の挨拶を互いに口にして、この瞬間の喜びにさらに表情を綻ばせた。
すると、二人の間に飛び込んでくるように伊之助がその場に戻ってくる。
「おい、子分ども! あけましておめでとう! だぜ!」
偉そうな口調には不釣り合いな挨拶は、あまりにも微笑ましく炭治郎も善逸も揃って吹き出して破顔した。
「なんだ!」
伊之助は何が起こったのかわからないといった様子で、炭治郎と善逸の様子を交互にうかがう。
「なんでもないよ」
「ああ、なんでもない。今年もよろしくな、伊之助」
二人の言葉を受けて、伊之助はニカっと笑って当然だと声を上げた。
今年もきっと、三人ならいい年にできるだろう。煌めきと祝いの声の中、三人は満足げに笑った。
