なんでもない幸せな一日

何もない休日、というものは退屈なものだ。
だがオスカーとミオにとってそれは退屈ではない。
二人が時間と空間、その全てを共有することができる貴重で、そして幸せな時間に他ならないのだ。
それを裏付けるかのように、オスカーの表情もミオの表情も柔らかく穏やかなものだった。そして溢れているのは〝幸せ〟の感情だ。それ以上でも以下でもない。
ソファの上で身体を寄せ合うだけ。ただそれだけの瞬間なのだが、彼らとしては至上の瞬間と言えた。
取り立てて言葉がこぼれる訳ではない。何かをするという訳でもない。
ただそこにあるのは、穏やかで静かな時間とお互いの存在のみ。
だがオスカーはそれが当然にここにあるものではないと、そう知っている。存在を分かたれかける、そんな経験に心当たりがないとは言えない。
ないに越したことはないだが、残念ながらその経験を見て見ぬふりはできなかった。それはいつかの自分の記憶であり、自分自身の記憶とは言いきれないものではある。けれど、それは確かに実感を伴った存在として胸の奥に存在していた。
ゆるく握っていたミオの手を、オスカーはしっかりと握り直す。
その動作にミオは「どうしたの?」と小さく尋ねた。
「……手を、離したくないなって思ったから」
ほんの少しだけ視線を下に落としたあと、すぐにオスカーは視線をミオへと向け直して笑う。
「月並みだけど、ずっと一緒にいたいなぁって」
ね、とだけ声を続けて小首を傾げて微笑むオスカーは真剣さと、少しの茶目っ気を合わせた様子だった。
堪らずミオは笑顔の花を咲かせる。
「うん、僕もそう思うよ」
答えの言葉を証明するようにミオはオスカーの手を握るなおした。
体温を分け合って、心を通わせ合って、二人は幸せの中でここにいる。