「だれ?」
その問いかけは、信じられないものだった。
炭治郎の目の前に居るのは善逸で、まごうことなく我妻善逸その人で。そうであるにも関わらず、善逸に見えるその人は心底不思議という様子で炭治郎のことを見つめている。
「ぜん……いつ……?」
呼ぶ声にも不安が混ざる。当たり前が崩れ去るまさに瞬間だった。
「どうして、俺の名前……知ってるんだ?」
冗談とは思えないほど真剣な面持ちで、恐る恐る尋ねてくる善逸と思しき人物は、じりじりと後ずさる。
炭治郎の鼻には、不安と恐怖、そして困惑の匂いが入り混じっていた。これは善逸だろう人物が嘘をついていないということの証明であり、それは同時にいま炭治郎の存在は見知らぬ人物として認識されているということになる。
そんなあまりにも信じがたい現実に、炭治郎は眩暈を覚えた。
