ぞわりと背筋に寒気にも似た感覚が走る。善逸は何が起きたのか分からないまま、真横に立つ炭治郎の方へと、勢いよく顔を向けた。
思い切りよく首を振った先、そこには想像していたよりもずっと近い場所に炭治郎の顔があって、善逸はぎょっとその目を見開く。
「おま……! 今、何したわけ……⁉︎」
瞳の中に涙をにじませながら、炭治郎にことの次第を問いただす。
炭治郎はいつになく意地の悪い笑みを浮かべてから、その口を開いた。
「善逸、耳が敏感だろう……?」
その言葉に、一瞬にして善逸の顔が林檎よりも真っ赤に染まる。
「ッ⁉︎ 耳に息吹きかけんな!」
不服を告げるその様子に凄みもなければ、可愛げばかりが目について炭治郎はその口を、流れるような動作で善逸の耳元に寄せた。
「嫌がっている顔ではないな? 期待の匂いを感じるし……」
たくらみばかりを感じるその表情すら整っていて、善逸は思わず両手で顔を塞ぐとくぐもった声で「やめろよ……」とだけ、精いっぱいの抵抗をする。
そうすることしか出来ない自身に、歯痒さを感じずにはいられなかった。
