この間話してて、ほとんどのKPCはネジ飛んでるって話になりました。何かにガン振りしてる節があるもので……笑
あと、前にそれぞれの戦い方の違いみたいなはなししてたの思い出したので、以下は一人ずつ小話。
●駿
夜の街はそのものがまるで死角のようだ。己の瞳は大してあてにならず、不意打ちや奇襲は当たり前。そんな場所へと変貌を遂げるからだ。
だが、駿にはその辺の事情程度は気にするような話でもない。彼にとって視るとは、瞳のみにあらず。感覚を研ぎ澄まし気取るものだ。
駿は一人、街中の入り組んだ道を駆ける。日本刀を携え走る姿は大通りで晒すわけにはいかないが、場所としても時間としても申し分なく自由に行動することが出来た。
大多数の人間からすると、完全な死角となる場所からずるりと長い腕が伸びてくる。とてつもなく長く、ひと目見るだけで異形のものとわかる腕だった。
「悪いな、視えてる」
その声とともにすらりと抜き放たれた白刃が、容赦なく腕を斬り落とす。
腕が崩れ落ちるのと、この世のものではない異音の叫びが響くのは同時だった。
道の角、その奥に本体は鎮座する。呻き苦しむそれに駿は容赦なく抜いたままの白刃を浴びせた。
全身が崩れゆく異形を背に駿は、淡々と得物を鞘へと収めてその場を後にする。
祈りはしない。今の一太刀が祈りの代わり、そして終わりの証だった。
●行孝
行孝は今の仕事を天職だと思っている。
それこそ他では生きていけないだろうというくらいに。この仕事こそ、生きる理由であり生きがいだ。
そんな彼だからこそ、彼の担う仕事が立て込むようなタイミングでは普段そこまでやる気に満ちているタイプでないにもかかわらず、目が爛々と光り輝く。
気分屋で行動にはムラがあるが、この仕事に対してだけは誰にも譲れないと思っているのだ。
ぞくりと背筋に緊張が走る。
それは間違いなく人ならざるものの気配だ。通報は遊び程度のものではと疑っていたが、そうでもないらしい。
「ふぅん、いい度胸じゃん」
どこか小馬鹿にしたような、それでもなにかに感心しているような、そんな声で言葉を落とす。そのまあま刀を大振りな動きで抜き放つと、がぎんと鈍い音が響いた。
「けど、バレバレだよ」
地面に落ちたのは石のつぶて、ただしなにやらもやりとした良くないものを纏っているものだ。
自身を狙ってきた方角と気配を確認した瞬間、足に力を込める。曲がりくねった道を可能な限り真っ直ぐに駆け抜けた。
そして本命といえる元凶を目にするや否や、思い切りよく回し蹴りを見舞う。次いでその反動で身体を回転させながら橫一閃を浴びせた。
されるがままになり、さらには存在を失いつつある異形に行孝吐き捨てる。
「僕にかなうと思ったのが間違いだよ、ばいばい」
●八雲
ずっと、この仕事をしている。彼自身のみではなく、神来社という家はずっと異形を屠り夜に暗躍してきた。
そのことは八雲にもすっかり当たり前になっている。家業を一部引き継ぐ形で仕事をしているのだから、それもまた然るべきものではあった。
今日もまたいつものように夕刻から日が暮れ、そして太陽の姿を消す頃合いに街を見回る。
依頼の仕事はもちろんだが、それ以外の方が大半だ。それで救えた命がたくさんある、見知らぬ誰かの命も友の命も。
そんな少し遠くへ行くような思考の間も、警戒をゆるめることは決してない。
今もそうだ。ちりちりと感覚が危機を知らせる。
嫌な気配は辺りに散らばり、どこからでも見られているような不快な気配だった。
「先に見つけられて良かった、かな……」
八雲はやれやれと呆れた素振りを見せるが、存在や気配には一切動揺することはなく静かに刀の柄をひと撫でする。
何とも形容し難い気配が迫り来るが、八雲は冷静にそれでいて素早く鯉口を切り間髪入れず敵の牽制どころか存在そのものを一閃のもとに切り伏せた。
その瞳は穏やかと言うよりは冷ややかで、感情という感情がごっそりと抜け落ちてしまったような冷たさを帯びている。
言葉こそ発しはしないが、青い瞳はただ冷淡に全てを見通していた。
●蓮
どろりと重たい空気が落ちてくる。夜の帳と言うにはいささか重すぎるそれは、蓮に直感的な身の危険を伝えていた。
とは言えど、今は仕事の只中だ。むしろこの感覚は好都合と言うことも出来る。
「さっさと片付けるか」
蓮はぼそりと呟くと居住まいを正して、重たい空気を落とす大元の居場所を探し始めた。
そうは言っても重たく、そしてはっきりとしたそれの気配を辿るということはさほど難しい話ではない。だが大元へと近づけば近づくだけ重たい気配は増し、しまいには街中に鬼火とも呼べる妖の炎が灯り始めた。
面倒だな、そう思うのが早いか炎のうちのいくらかが蓮を目掛けて飛んだ。
蓮は即座にそれを反射の動作のみで躱すと、そのまま目指した場所へと進み続ける。これでもかという程に炎に妨害をされたが、その全てを刀を抜くことなく躱しきった。
やがて大きく炎をまとった異形がたまらず姿を現す。かの者が存在の危険を察知したのだろうことは明白だったが、それでもなお蓮は駆けて次には流れるような動作で鯉口を切った。
「お前が本体か」
見た目はもちろん、直感も全てがそう言っている。語りかける言葉も声もどこか淡白で現実味がなかった。
そしてついに本体に白刃を浴びせる。無駄のない動作、整う所作はこんな場所にあっても美しさをたたえる。
炎はまるで水を被せられたかのごとく勢いを失い、灰になるに等しくこの世から消え去った。
●凪
後輩ができようとも、やはりと言うべきか個別で対応を求められる瞬間は多い。実情としては凪に相変わらず実案件は集中する。仕方がないことではあるが。
そうであるにしても、自身を慕い信頼してくれる後輩がいるというのは凪にとって嬉しいことであり、気張りがいのあることでもある。
だからこそこれまでにも増して仕事に邁進できるというものだ。
「かっこわるいとこは見せらんないしな」
凪は自分自身を奮い立たせるように呟く。
今宵は空に月がなく、一層と闇を際立たせていた。こういう夜には面倒なことが起こる、というのは凪の経験則だ。闇は満ちすぎると大きな異形を呼び寄せてしまうことがある。もちろんそれだけが理由ではないが、大きな要素であることは確かだった。
そこには確かな不穏が存在する。
「おでましか」
呟いた凪の口元は不敵に笑みをたたえていた。次の瞬間には彼は駆け出しており、向かう先は開けた場所だ。
凪は小回りは効く方ではあるが、それでも攻撃をする戦いを繰り広げるという場合においては障害物が多すぎるのは問題だった。加えて幸いなことに敵は凪を狙うように移動してきている。それが彼にはっきりと承知できるからこそ、移動は良い策のように思えた。
開けた場所はそう遠くないところにあり、中央で凪は身構える。手には拳銃が握られていた。
ずるり、ずるり。音が鳴る。
その姿は不定形の異形と称するのが一番正確と思われる、そんな見るからに気色の悪いものだった。
あちらからはぬるりとした、手と表現するには語弊のある何かが伸びるが凪はそれに向けて拳銃を向けて迷いも躊躇いもなく撃つ。激しい衝撃と鈍い音が鳴り、不定形な何かを粉砕した。
それは明らかに狼狽をして動作をぐらつかせる。
「そこだ」
凪はその隙を見逃さない。足を踏み込み、間合いを一気に詰めるとそのまま刀で一閃した。
霧散していく身体に、異形は狼狽するが凪は涼しい顔だ。だが、ほんの少しだけ苦しげな顔を浮かべて「ごめんな」とだけ呟いた。
