あの時あの瞬間に重なる

絵梨香ちゃんが日本刀に姿を変えた時、その事実に一番驚いて息をのんだのは間違いない。
けれどもね。ぶっちゃけ、一隻眼の時の発狂と日本刀を重ねていたんだよなぁ。
だから二重の意味で息をのんでいたのだわ!!!!

ぞわり、とした。
いや違う。
どきり、としたの方が正しいのかも知れない。
聞かされていたことが、相違なく事実だったということへの驚きが先に立つのは間違いない。
どんなに理路整然と説明を受けたところで、信じるに足る言葉だったところで、伝えられたことの大半が普通に生きていれば荒唐無稽としか思えないようなものだ。
それを現実にこの目で見て、やっと真実だと認識するに至った。にわかには信じ難い、そんな状況に息をのんだことは間違いない。
だが、それだけではなかった。
彼女の姿が日本刀に変わる、その瞬間に何かが重なった。
何か、という言い方は適切ではない。それは自分自身で答えを導き出し、結論として既に認識していることだからだ。
自分が一時的に人ならざるものを認識できなくなっていたあの時、必死に戦う中で一度だけ純粋に綺麗だと思った瞬間が重なる。戦う後輩の姿に目を奪われたあの日が、帰ってきたかのように。変わりゆくその姿が、シルエットが、動作が、美しいと、思ってしまった。
それは、全てから根底から変わってしまいかねないもののように思える。見てはいけない禁断の箱でも覗き込んだような気分だ。
「駿パイセン。前、前」
彼女の声にハッとする。
──そうだ、こんな感傷じみた何かに浸っている暇なんてない。
後輩が姿を変えた得物を握りしめ、人ならざる敵たちと相対する。抱いたばかりの感情は根こそぎ置き去りにして、なんなら忘れてしまえと念じながら。
知っている。こういうものほど捨てられない。
知っている。こういうものほど後生大事に持ってしまうのだ。
今まで誰かと深く関わることを根底では恐れ、拒否してきた自分の何かが変わったような気がした。