あきらよラストシーンリプレイ風

火の神にお帰りいただけるかのところ!です!
※ここめっちゃ雰囲気好きだったので書きたくて!!!抜き出しリプレイ小説だなと思うけど、まぁそこは気にしない!

鈍く輝く秋の一等星が、悪しき神を喚ぶ。
火の神の降臨を目前にして、その目論見をした張本人である酒井耀太は同じく神守りの役割を背負う──背負わされている篁朔太郎に哀れみの視線を向けた。
「……君なら分かってくれると思ったんだけど。僕と同じように大切だった人を、この役割のせいで失ってしまった君なら」
どこか冷ややかな声は、朔太郎の耳にははっきりとした非難として届く。
「……気持ちがわからないとは言わない、言わないけれど、この行動を肯定はしない。出来ない」
実際、耀太の言う通りにかつて己に従う神喰いで、実兄のように慕っていた一堂丞のことを失った。与えられた役割の中で、丞は朔太郎を庇って死んで行ったのだ。
悔しい気持ちは理解する、やるせない気持ちも。
けれど。朔太郎にはどうしても共感できないところがある。
耀太は悲しい出来事の結果、この役割や影鬼といったものを恨むに至ったのだろうが、朔太郎はそうではなかった。
己の無力を嘆きはしたが、この役割は大切な──もうこの世にはいないとしても──兄との繋がりだったのだ。それに加えて今は、次の神喰いとなった衛も朔太郎と共にいてくれる。
耀太の選択は丞の、衛の、そして朔太郎の在り方への否定のようにも感じられた。
「……丞を、衛を、俺自身を、それは否定するものだから。この役割で失ったものがあるからこそ、その次をより良くしたいんだ。どんなに時間がかかったとしても、前を向いて歩いていく。だから酒井さん……あなたの行為を、これ以上野放しにするつもりはない」
武器に青い炎を宿したまま、静かにそしてはっきりと朔太郎は告げる。隣で衛が驚いたような表情を浮かべていたが、朔太郎は表情のひとつも変えることはない。
「火の神を封じ続けて、神守りと神喰いなんて役割を背負わされ続ける限り、また失うかもしれないというのに」
冷ややかに、少しの哀れみを込めて耀太は語る。
「こんな家も役割も、終わらせるべきなんだ」
彼の声に呼応するように朔太郎と衛を取り押さえようと、宮子を襲っていた者達の凶刃が迫る。
これでは、集中して術を発動させるのは難しい。誰でも容易に想像できてしまう状況は、間違いなく劣勢だ。
しかしその状況は、夜の闇を切り裂くように橙色の炎が飛び込むことで一変する。しかもそれは朔太郎と衛を庇うように襲撃者との間に割って入った。
「陰陽術、影縫い……なんて、なあ。おっきな借り、返しに来ましたよ〜」
「助太刀いたします」
飄々と普段と変わらぬ様子で姿を現したのは入日良近、その隣には倉木千歳の姿もある。
二人の登場により襲撃者は、ぴたりと動きを止めた。
否、良近の影縫いにより動けなくなってしまっている。
その間に千歳が、意識のない宮子に駆け寄って急いで止血の処置を行い始めた。これで、脅威も憂いもない。
紆余曲折、苦楽を共にしてきた二人が、今、その力を合わせて千年前に閉ざされた門を再び開く。その舞台は全て整った。
全てはあの目の前の悪しき神を、宇宙の彼方へと送り返すために。
「……朔太郎さん」
衛は静かに呼びかけながら、ゆっくりと左手を差し出す。
「うん……」
朔太郎は呼びかけられた声に応えながら、差し出された左手にそっと右手を合わせた。
互いの体温が伝わる。ここにいるよ、そう伝えてくるようなあたたかさはこの恐ろしい状況でもなお二人にとって、自分が自分らしく居られる灯火でもあり道標でもあった。
「今は怖いですか?」
穏やかな声で衛が問いかける。
「今は……衛が、いてくれる。だから大丈夫だよ」
落ち着いた声で朔太郎は応えた。
「俺も、朔太郎さんが隣にいてくれるから。……きっと大丈夫っす」
大丈夫を確かめ合い、朔太郎は頷きながら微笑んで見せた。
自分たちならきっと、大丈夫。
そんな気持ちに応えるように衛は、ぎゅっと強く手を握り朔太郎の微笑みに笑い返した。
そう、二人ならきっと、大丈夫。