〝変わった〟という言葉はあながち嘘でもない

悲観していたつもりはなかった。
絶望したつもりもなかった。
ただ、当たり前に自分は劣った存在なのだと思っていただけだ。それだけだった。
同じ顔をした片割れは、自分にとっては手の届かない相手で。すごいと思う反面、どうして自分はこんな風になれなかったのだろうとはよく考えた。
結局はこの上なく自分勝手なくせに、自分でなにか行動を起こすことも怖くて、ただただ誰かが手を差し伸べてくれるのを待っている。
愛されたいといくら願っても、その立場を勝ち得るための努力をしなかった。
諦めと、必要とされたいという欲求。
それが彼の大半を占めていた。
このままでいいのか──そんな気持ちはいつだってそこにある。けれど、現状を打破するきっかけも勇気もましてや気概などありはしない。
薄っぺらに笑って過ぎていく変わり映えしない毎日を、ただ無為に生きていく。
他人事にうつつを抜かして自分事を押し潰して、その為だけの毎日だった。

それが最近ではどうだ。
こんなにも目まぐるしい毎日があっただろうか。
こんなにも誰かに視線を向け、向けられる日々があっただろうか。
初めてのことばかりが起こる。
しかもそればかりではなく、これまでのような傍観するようなことでは済まされないことが目白押しなのだ。
自分自身がその責任で何かを選択する。
その重さは苦しくもあり、しかし達成感もあった。
こういうのを〝生きる〟というのだろうか。
心なしか以前より視線は前に向き、不器用でも何かを主張することもある。
〝お前、変わったよ〟そう言われるまでは毎日が必死で、振り返る余裕すら無かった。
言われてみて、落ち着いて振り返る時間を得て、思う。
──そうかもしれない。
実際には間違いなくそうだ。
これはきっと何かが変わっていて、少しでもほんの少しだとしても停滞ではない何かがそこにあるということだ。
もしかしたら、自分から何かを変えようと本気で願って行動したのなら、これまでは出来なかった何かを変えられるのかもしれない。
そんな夢の一つでも抱けそうな期待感が、漠然とではあるがそこにはあった。