八雲の戦闘描写

八雲はただそこに立っていた。
偶然にせよ、はたまた必然にせよ、その場に佇んでいる。そのことは純然たる事実だった。
微動だにせず、八雲は静かに目を伏せる。研ぎ澄まされ澄んだ感覚ははっきりと彼に〝全て〟を伝えた。
文字通り全てを。
この場に存在する人間とは相容れない何か、その存在すら例外なく捉える。
彼の存在が八雲を捉えるよりも早く、一度は閉じた目を再び開いて地面を蹴った。迷いのない一歩は確信ある一歩であり、そこには一切の不要も無駄もない。
手が得物の柄を撫で、次の瞬間には鯉口を切る。
小気味良い音が鳴るがそれすらも置き去りにして、八雲は抜きざまの一閃で全てを終わらせた。
「次はどうか幸せな生を──」
祈りの言葉は消えゆく存在に捧げる、優しく残酷な慈悲だ。
刀身を払い鞘に収めながら八雲は空を見上げる。
鎮魂の言の葉と魂を追いかけるように。