窓から光が差し込む。青空に雲はなく、文字通りの晴天が世界を見下ろしていた。
そんな好天気の横目に、いつものように少年は本を読んでいる。
明るい中で本を読むことを彼は好んでいた。本はいろんな世界へと自分のことを連れていってくれる、しかもそれを晴れやかな日にすれば殊更気分は良い。
特に他人と関わることが嫌いというわけではなかったが、本の世界に没頭することはそれ以上に興味深いことのように感じられていた。とは言っても、彼にも例外はある。
唐突に彼の家の呼び鈴が鳴った。母親が返事をしながら扉を開くその様子は馴染みの光景だ。
「こんにちわ! 海智クンいますか!」
聞き慣れた明るい少女の声に少年は本を閉じる。そう、これが彼の例外だ。
「いるよ」
「遊びにいこ!」
「うん」
二つ返事で玄関から外へと向かう。母親に送り出され、少女に手を引かれ少年──海智は駆け出した。
「愛七、今日はどこに行くの?」
「きれいな場所をみつけたんだ!」
少女──愛七は海智の問いかけにはっきりとした声で答える。
この光景は普段と変わりないものだった。
海智は自分の見たことのないものを見せてくれる彼女と一緒にいる時間を好んでいる。本とはまた違う、実感の伴った体験は海智にとってかけがえのないものだったからだ。
楽しいこと、美しいもの、不思議なこと、綺麗なもの、その全てをいつだって愛七と二人で共有することが当たり前のこととしてそこにあった。
だから、海智は愛七と外へ向かう。それが当然でそうすることに信頼を置いているからこそだ。
「ほら! ここ! きれいでしょう?」
愛七が誇らしげに、そして楽しげに笑って海智に見せたかった場所を提示する。それは本当に美しく、街中にこんな場所があったのかと驚くほどの美しく花の咲き乱れる場所だった。
彼女の言葉の通りこの場の全てがこの上なく綺麗で、輝きを放っているのではないかと思うほどだ。
「うん、すごく」
海智の返答に愛七は、今度は喜びの感情を見せながら笑う。
「本当に、きれいだね」
海智は噛み締めるように呟いた。
