満月を後押しにして(tnzn)
空を見上げると、大きくそして鮮やかに輝く満月が柔らかな光を滲ませる。雲ひとつ浮かびもせず、月を遮るものは何ひとつありはしなかった。「すみません、付き合わせてしまって……」 うつくしき満月の下、申し訳なさそうに項垂れたのは炭治郎だ。「何言っ…
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聖なる夜は微笑んで(tnzn)
ひと月近くも鳴り続けたジングルベルも今日が聞き納めだ。明日になれば世の中はあっという間に年始の装い、その変わり身の早さには毎年呆れるのを通り越して笑ってしまうが、それでもクリスマスという現代の地獄に比べればなんてことは無い。 我妻善逸は内…
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巡り巡りてその先に(tnzn)
――いやだ、いやだ! 逝くなよ、まだ伝えたことがたくさんあるのにっ 叫ぶ彼の腕の中には、同じ年頃と思しき青年が抱えられている。彼は全身きずだらけで、肌も衣服もそのほとんどが血に染まっていた。 青年の口からはうわ言のように、大丈夫か、無事か、…
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旧故よ今生は穏やかたれ(tnzn)
黒の絵具で塗り固められたように真っ黒な空には、星のひとつも見えない。街の明かりは煌々と灯り、その主張の激しさはそこにあるはずの淡い星の光を奪い取ってしまっていた。「チュン! チュンチュン!」 そんな漆黒の空を一羽の雀が舞う。雀は夜でも飛ぶ…
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アンノウンな心(tnzn)
グラウンドからの声、楽器の鳴る音、歌声、授業という拘束された校舎からはたくさんの音が溢れている。その音は希望に充ちていて、それがどうにも精神を抉ってくるようで集中できないまま、それでも手を止めずひたすらに動き続ける男子生徒は、透き通るほど…
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黄色の残像/桃色の残響(znnz)
『黄色の残像』――禰豆子ちゃん、大好きだよ 夢の中で起きた出来事は鮮明に、禰豆子の脳裏に焼き付いていた。黄色の羽織、透けるような金髪を持つ人が、自分の前に立ち大好きだと告げる。その声は優しくて、暖かくて、いとしく彼女の耳に目が覚めても残って…
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タカラモノ(tnzn)
きっと仕方の無いことなのだ。 全ては出会ったとき、彼の鋭敏な嗅覚が善逸の、優しくて強い匂いを知ったその瞬間にはじまっていた。実際の言葉と匂いがあまりに違いすぎて、戸惑ったのも今ではいい思い出である。 戸惑いの中からはじまった想いは彼の中で…
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愛し君へ(znnz)
キメツ学園の校門の前に一人の女子生徒が立っている。毛先に少し朱色の混ざった長い黒髪をふわりとおろした彼女の様子は、どこか落ち着きがないものだった。校舎側の様子を伺っては、そこから視線をそらすということを繰り返している。事情を知らない人間が…
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スケープゴートにさせやしない(tnzn)
「……死ね」 隠れていた伏兵が飛び出す。気配を消して、存在を隠して、全てをひた隠していた伏兵は、善逸と炭治郎の鋭利な感覚すらも超越していた。小さな決意とも合図とも思える殺意の言葉を口にして、驚くほど軽やかに身を翻す。 伏兵の口から出た声は善…
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寄る辺なきココロ(tnzn)
「先輩、飲みすぎですよ」 そう嗜めたのは後輩の炭治郎だった。飲みすぎと言われてしまった、先輩こと善逸は、頬を酒の力で赤く染めながらへにゃりと笑う。「だいじょうぶだってぇ」 返す言葉もまたへにゃりと柔らかいと感じさせる、これがまさに酔っぱらい…
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君があまりに幸せそうだから(tnzn)
ぐう、と腹の虫が鳴る。善逸は腹の虫を宥めるように、自分の腹をさすった。 屋敷の外に出ていた善逸が屋敷へと戻ってきたのは、つい今しがたのことだ。あたりは薄暗く、紅と橙の混ざり合う空は夜の到来がすぐそこまで迫ってきていることを告げている。 空…
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