一次

一次創作小説置き場。

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黒猫は幸運と幸せを呼ぶ足掛かり

人の転機というものは、唐突に訪れる。それを手にするかしないかは個々によるが、予期しないことが転機へ繋がることは往々にしてあることだ。神来社八雲の新たな転機は、ある日の夕刻の迫る頃に訪れた。やはり突然に。その日の八雲は自身の事務所で書類やら資…

御猫又掛四荒八極──おねこまたかけしこうはっきょく──

この世界は人間と、そして妖で満ちている。 艶やかな黒毛と青と金の瞳を持つ猫から転じて猫又となった又八。 彼はこの街を、そしてこの世界を愛している。 街の中で猫として、猫又として、そして人間として彼は日々を生きていた。 これは猫又の又八が、時に街の中で人間として生き、時に猫又として街を守り、時に猫として人間と接するお話たち。 ※他サイトでもお話を公開しております

宵闇の死神たち

死神には夜が似合う。とは言っても、死神という存在もまた個性があるものだ。明るい性格の者も、生真面目な者も、様々な者が存在している。その点は人間と相違ない。ただ、その存在が死を刈るものであり、存在に必須なものが食物ではないという点においては、…

お転婆大魔王とうわさの生き物

──ねぇ、知ってる? 吸血鬼のこと。それは人間にとって隣人であり、同時に得体の知れない存在だ。基本的に人間に吸血鬼が目立って存在を主張することはない。概ね敵対することもなければ、大半の場合はどこにいるかわかりもしないようなものだ。それでも最…

『呪い屋』と億劫なる乙女

この世には、人を呪う店があるという。 その店で呪いを依頼した相手は、必ず呪われて魂すらもこの世に残らない。 ──本当にそうすることは、正しい選択なのだろうか。プロローグ人を呪わば穴二つ──使い古された戒めの言葉だ。人間はどう生きようとも妬み…

届かないものよ

君の声は遥か遠く。笑ってくれないか、そう願っただけだった。それなのに、君の姿も声も全てが遠くにある。こんなにも思っているのに、何ひとつも届きはしない。伸ばした手は空を切り、誰にも何にも届きはしないままだ。もう君と会えなくても、君に認識されな…

虚しきはその姿

不思議なものだ。何かが少し変わるだけで、それまで気にもかけなかったものに意識が向く。まるでそれが、それだけが害悪と言わんばかりに糾弾し出すようなことだってあるのだ。受け取るものも声を出すものも、等しく全ては自身のフィルターを通して物事を観測…

花菖蒲

「──僕を信じてもらえるだろうか」彼の青空のごとく鮮やかな瞳は、真剣そのものだった。信じなかったことなど、出会ってこの方一度だってない。いつだって最善を尽くし、死力を尽くし、自分だけでなく誰かのために全力な彼だからこそ、共にいた。そんな彼か…

この手はきっと

少し先に生まれた自分。だがそれだけで、長子とされて厳しい日々があった。だがそれがどうしたと言うのだろう。先に生まれたからこそ、後に生まれた家族を守ることが出来るのだ。必死で厳しい日々は、手を伸ばし届かせるための準備だった。これで平穏を守るこ…

いついかなる時も立ち向かう者

いつだってなにかに立ち向かう時は自分一人きりだ。当然と言えば当然の話ではある。自分の問題に立ち向かうのは自分ただ一人だ。それ以上でもそれ以下でもない。彼女はそれでも、折れぬように倒れぬように、そこに立つ。表情は負けられない決意も背水の思いを…

尊き音は空に溶け

弦を弾き音色を確かめる。慣れた手つきで楽器の隅々に至るまでを確認し、彼は満足そうに頷いた。幼い頃からならい続けたバイオリン。はじめこそ思うように音が出ず、もうやらないと何度も親に主張したものだったが、今ではもうそんなことも無い。奏でる音も全…

翡翠の翅

随分遠くまで来たものだ。いつか僕に感情をくれたあの子はとうにこの世にはいない。僕に何かを食する楽しみをくれた老人もだ。悲しみにくれたあの日からどれほどの日がたったのだろう。人ではない僕には実感がわかない。いや、これはただの言い訳だ。寂しい時…