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※怪盗パロを書きたいという話(kmbk)

「予告する! そのお宝を、頂戴する!」 凛として、淀みのない声が響く。通りがかった人々はその声の主を探して視線を右往左往させるが、全くもって見つからない。「現れたな、怪盗!」 今度は先の声に比べると少なからず幼さを感じるとともに、強い意志を…

いつかきっと幸せに(tnzn)

 冷たい風が頬を刺す。 どうしてもここに来なければならない、約束を胸にこの場へとやってきた。しかし、まるでこの行動が無駄とでも言わんばかりに、冷たい風は容赦なく吹き荒ぶ。その冷たさに彼はその赤みがかった瞳を細めた。「たんじろ?」 呆けて舌足…

それは少しの誘惑で(tnzn)

 ぞわりと背筋に寒気にも似た感覚が走る。善逸は何が起きたのか分からないまま、真横に立つ炭治郎の方へと、勢いよく顔を向けた。 思い切りよく首を振った先、そこには想像していたよりもずっと近い場所に炭治郎の顔があって、善逸はぎょっとその目を見開く…

カミ様に奉ずるは(tnzn)

 辺りは冷ややかで、しんと静まりかえっている。そんな空気の中で全くと言っていいほどに人気のない、緑の生い茂る緩やかな登り坂を、善逸は一人ひたすらに歩き続けていた。 この道の先には、決して大きくはない祠がある。彼の目的地はそこだった。 厳密に…

だいたいあいつのせい(tnzn)

 黄色のものを見ると、どうしても思い浮かぶ顔と胸の内に去来する想いがある。落ち着かない、浮ついた感情。大きく揺り動かされるこの想いには、まだ名前をつけたくはない。 そんな風に思うのは臆病風に吹かれてしまった自身のせいであることも去ることなが…

反響の想い(tnzn)

 音が響く。それは善逸のよく知るもので誰よりも優しく、涙の溢れそうになる、心の底から嘘偽りなく好きだと言えるもの。 音の主は振り返る。赤みがかった黒髪に、折り目正しくもはっきりと意思を宿した紅の瞳は、真っ直ぐに善逸を射抜く。「どうかしたのか…

待ち人来たれり(tnzn)

 青い空に眩しい日差し、今日も快晴だ。しかし、善逸の心は落ち着かない。 ここしばらく音信不通となっている炭治郎のことを思うと、塞ぎこまずにはいられなかった。任務が長期に及ぶことは珍しくない、しかし鎹鴉も戻らず何一つ現状が分からないことは稀で…

暗躍せし雷鳴(tnzn)

「あっ……」 小さな声が漏れる。炭治郎は目の前の光景がどうしても現実とは思えないまま、しかし目を背けることもなく真っ直ぐに前を見つめていた。 炭治郎の視線の先に在るのは、善逸の姿と彼と相対するこの世のものとは思えない謎の化け物の姿だ。善逸の…

求めるは蕩けるほどの(tnzn)

 炭治郎の目の前に経つ善逸は、露骨なまでに頬をふくらませ僅かに視線を外してはすぐにまたその視線を戻すことを繰り返している。善逸の耳をもってすれば目で様子をうかがわずとも、諸々のことは筒抜けであろうにそうしないところが炭治郎から見て堪らなく愛…

現実が今ここで崩れゆく

 何気なく覗き込んだ一面ガラスのショーウィンドウに、映り込む者を見てぐらりと目眩を覚える。善逸は思わず双眸を手で覆うが、瞼の裏に貼り付いたように先程の光景が目に浮かぶ。――自分じゃない、自分の姿が確かに見えた そんなはずはない、頭では否定し…

夕陽がみてる(tnzn)

 ゆっくりと近づけていた顔を二人ともに離すと、柔らかな笑みを浮かべながら炭治郎は善逸の頭を撫でた。「炭治郎、お前……ずるいよ」 口をとがらせながら、言葉は非難するようなものではあったが穏やかな声と、穏やかで少し潤んだ瞳を向ける善逸に炭治郎は…

非日常からの帰還(tnzn)

「あっ……炭治郎、おかえり」 炭治郎の部屋の前で廊下に腰を下ろした善逸が、眠気を帯びた柔らかな声で迎える。 日没からはどれくらい時を刻んだだろうか。外には明かりひとつもうないような時間にもかかわらず、善逸は炭治郎の帰りを待ち続けていたようだ…