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手に取るように香り高く(tnzn)

 よく知った匂いが鼻に届く。炭治郎はその匂いの主の方へと向き、柔らかな笑みを向けた。「お疲れ様、善逸」 善逸は炭治郎の様子に安堵の表情と、目元に涙を浮かべて駆け寄る。「炭治郎ぉ、疲れたよぉ」 情けない声をあげながら炭治郎の元へとやって来た善…

カミナリは、お好き?(tnzn)

 空が光り、ずどん、と轟音がが鳴り響く。程なくして空を真っ二つに両断してしまいそうなくらい、大きな稲光が走った。「ひぃ……っ」 耳を塞いで小さく怯える声を漏らしながら、善逸は全身を小刻みに震えさせている。その様子は雷への恐怖心をありありと感…

祝え、君の生誕の日を(tnzn)

 早朝、日が昇りはじめるかどうかくらいのころだ。とある寝床周りがどうにも騒がしい。 その部屋には、落ち着きのない様子の炭治郎と伊之助の姿があり、箱の中にいる禰豆子もまたどこかそわそわとしていて、漂う雰囲気そのものがこの上なく落ち着きがなかっ…

君も幸せでしたか(tnzn)※死ネタ

 欲しいものほど手に入らない、というのはよく言われる話だ。 実際それは、炭治郎にも適用されているらしい。何故なら、炭治郎が手を伸ばしても手を伸ばしても、彼の求めるものはその手をすり抜けて行ってしまうのだ。 相手からは自身に向けられた恋慕の甘…

漫ろ雨の下で(tnzn)

「雨の匂いがするな」 鼻をすんすんと鳴らしてから、炭治郎は呟いた。ほどなくして降り出した雨は、激しい程でもなくただしとしとと降り注ぐ。「なぁ、炭治郎」 炭治郎の隣にいる善逸は視線を雨粒の落ちてくる空の方へと向けながら、呼びかけた。「うん?」…

ある朝の一頁(tnzn)

「善逸、朝だぞ」 朝焼けの光が障子の隙間から射し込んでくる。うっすらと照らされる室内は、明るいというにはまだ程遠い。そのまだ薄暗さの残る中で炭治郎は身体を起こし、微塵も眠気を感じさせぬ様子でまだ夢の中にいる善逸の身体を揺らした。「ん~……」…

憂惧 ノ オト(tnzn)

――善逸の匂いがする。心配させてしまったな…… まだ安静にしておくようにと目が覚めてから通りがかる人に言われ続け、もうそれを何人に言われたのかわからない。炭治郎は未だあまり自由のきかない身体を少しだけ動かしてみては、鈍く走る痛みに顔をしかめ…

僕らの過ごす何気のない日常(kmbk)

 今宵の月は大きく明るい。禰豆子にあてがわれた部屋の縁側で、炭治郎は一人大きく美しい月を眺めていた。太陽が空から姿を隠してから、それなりに時が過ぎていたが布団のに横たわる禰豆子の瞼は硬く閉じられたままだ。 今晩は起きないかも知れない――彼女…

無自覚の恋慕(tnzn)

 当たり前のようにそこにあって、でもそれは次の瞬間には壊れてしまいそうな、そんな儚げな印象を受ける笑みで伏し目がちに炭治郎に向けられる瞳は琥珀にも似た黄色だった。 咲き乱れる藤の花の中、炭治郎は花に目をくれることも無く向けられる黄色の視線を…

祝いの言葉は日の出に続き(tnzn)

 朝の空気が清々しい。炭治郎は一人、縁側に続く障子を開き大きく伸びをしながら、深く深呼吸する。 朝焼けの淡い色の空を見あげながら、縁側まで歩きゆっくりと腰を下ろした。時間が早いからだろうか、あまり人の生活する匂いは感じない。もう少しすると、…

君と僕の知らない僕ら(tnzn)

 夜の帳はすっかり降りて、縁側に面した外から差し込む月明かりに部屋の中は淡い光で照らされている。控えめな光に照らし出されているのは炭治郎と善逸の二人の姿だ。彼らの表情はどこかぎこちなく、互いの間には不自然な距離が生まれていた。 互いに互いを…

君に落ちる(tnzn)

 最近、我妻善逸には悩みがある。それは驚くほど後輩の竈門炭治郎から、いろいろな主張が繰り出されるのだ。具体的にはどういうものかというと、驚くほど直球に彼が好意を伝えてくる。それは善逸の鋭敏な聴覚で全力で真意を探るまでもなく、真っ当かつ正直な…