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無意識の意識(tnzn)

 琥珀と赫灼の視線が絡み合う。しかしその視線はどちらからともなくすぐに外れて、互いが明後日の方向を向いてしまった。 ここ最近ずっとそうなのだ。どうしてだったか、今となってはそのきっかけを誰も思い出せなくなってしまっていたが、今までは仲良くや…

閉塞に伝う涙(tnzn)

「俺のものになってくれ」 炭治郎の声は切実で、そして必死な想いを乗せながら真っ直ぐに善逸へ向けられる。 気持ちはとても嬉しいものだ。自分と同じ気持ちなのだから。 しかしそれはいけない、いけないのだ。「無理だよ、炭治郎」 善逸は今にも泣き出し…

しるべの音(tnzn)

 どうしてこんなにも眠たいのだろう、よく分からない……ぐらぐらと揺れる視界にも灯りがもれている場所は分かった。とりあえずあそこまで、あの場所までは行こう。ただただ眠たくて、眠たくて仕方がない。 ああ、やっと灯りが近くなってきた。あいつはいる…

懊悩する音は、陽光の音に絆されて(tnzn)

 神童、そうもてはやされた存在はいつかはただの人になる。それが遅いか早いか、それぐらいの差しかない。 少なくとも一人の少年は鍵盤の神童と呼ばれ、そして早々に心が折れてしまった。大人の期待と欲望は幼かった少年には耐えきれず、表舞台から忽然と姿…

スリーカラーに煌めくとき(kmbk)

 今日は、間違いなく運命が変わる日だ。 控室にいる三人にお願いしますと、スタッフからの声が掛かった。三人は視線を交わし、各々が承諾の言葉を告げる。 まず最初に意気揚々と立ち上がったのは、白とイメージカラーの青を取り入れた衣装を着崩しつつ身に…

金緑の想いの行方(tnzn)

 ぽろり、ぽろり、涙が石になる。こぼれ落ちる石はきらきらと金緑の色を放ちながら床へと転がり、ころころと音をたてた。 泣き腫らしていたはずの当人が、予想だにしなかった状況に絶句して、途端に涙もピタリと止まる。「え、なに? これ……」 その言葉…

言い入れるは切実たれと(tnzn)

 ――神様、俺、明日死ぬ? 寧ろもう死ぬの? 善逸は目の前の状況に、無意識に死を覚悟しそうになる程には混乱していた。実際はそんなことなど一つもない、側から見れば幸せを願い祈られるようなものなのだが、善逸本人はそれは自身に不似合いだと思い疑わ…

満月を後押しにして(tnzn)

 空を見上げると、大きくそして鮮やかに輝く満月が柔らかな光を滲ませる。雲ひとつ浮かびもせず、月を遮るものは何ひとつありはしなかった。「すみません、付き合わせてしまって……」 うつくしき満月の下、申し訳なさそうに項垂れたのは炭治郎だ。「何言っ…

聖なる夜は微笑んで(tnzn)

 ひと月近くも鳴り続けたジングルベルも今日が聞き納めだ。明日になれば世の中はあっという間に年始の装い、その変わり身の早さには毎年呆れるのを通り越して笑ってしまうが、それでもクリスマスという現代の地獄に比べればなんてことは無い。 我妻善逸は内…