神来社八雲

不協不一致不愉快戦線

 どうしてまたお互いが関わることになってしまったのだろう。 二人はそれぞれそんな風に感じながら、お互いに視線を向けた。ぶつかった視線は、片方をより不服な表情に、また片方を困り果てた苦笑を浮かべさせた。 彼らは本来、交わることのない存在だ。仕…

神の使いたる龍の者

 雑踏の中に紛れ、人間たちの間を抜けていく。もちろんそれは当たり前のことであり、周りの誰も振り返りもしなければ気にかけもしない。疑問を抱くようなことももちろんなければ、違和感を抱かれることすらもなかった。彼──八雲は多くの人間の中にありなが…

神の来る社のもとに生まれし者たち

幼い頃、憧れたことが賀九にはあった。遠くに見るだけの存在である兄、八雲と言葉を交わして兄弟らしいことを何かしらしてみたい。普通であれば当たり前に叶う、ささやかな憧れだった。だが、彼らが生まれた神来社家は普通ではない。賀九のそんなささやかな憧…

封じられた悪夢

予想外、想定外の出来事というのは世の中に多く存在する。それこそ無数に発生し、誰の身にも等しく起こりうるものだ。左雨行孝、そして神来社八雲にもそれはやはり等しく起こりうる。まさか、二人の手が手錠で繋がれていようとは思うはずもないが。誰よりも不…

恨みの花は共を求めて

鮮やかに咲き乱れるひまわりたちはまるで太陽のようだ。地面を太陽で埋め尽くし、光り輝くものへと変える。それはまるで、異界へと繋がる扉のようでもあった。命あるものはそこでの存在を許されず、美しいものというよりは恐るべきものというべき場所が広がっ…

君求む、ただ不足に君求む

「キスしてもいい?」今日、そう求めたのは八雲の方だった。「だめなわけないだろ。俺もしたいし」嬉しそうに笑う恒人に、八雲は顔を寄せる。最近は特に恒人が嬉しそうに笑うことが増えた。前よりもずっと、嬉しそうに笑うのだ。八雲としてはそれが嬉しく、喜…

紺桔梗と丹が交差する先では

夜は静かだというのは幻想だ。もちろん人によって変わるところはあり、静かに感じる者も静かに感じない者もいる。ここに肩を並べて歩く二人は、まさしくその二分された存在のそれぞれだ。片や夜に静けさを覚えることのない神来社八雲、片や夜は静かだと感じて…

不協和音の協和音

白髪の男は今回、合同で任務にあたれと指示を受けて連れて来られた男に対して、あからさまに不服そうな表情を向けた。不服そうな視線を向けられている黒髪の男の方は、そんな視線を気にかける様子ひとつなく通された場所をぐるりと興味深そうに見渡している。…

八雲の小話的なやつ

ふと思うことがある。どれほど一般的な日常と自分はかけ離れているのだろう、と。考えたところで瑣末なことではあるのだが。それでもふとした時には考えてしまう。それは自身が非日常に身を置くゆえではあるのだろうが、それにしたところで考えずにはいられな…

神へ望まば

祝詞は神への言葉だ。その中における祓詞(はらえことば)は罪や穢れなどの不浄を取り除くために神に捧げる言葉であり、その奏上は力ある者によればより強く作用する。そのことは人の理とは少し離れたものに触れる仕事をする者たちには、そのことは純然たる事…