左雨行孝

至る闇の先

戦いにおける得物とは、一番扱いを得意とする物という意味だ。しかし、だからといって得物以外のものが使えないということでも決してない。少なくとも左雨行孝という人間は、得物に対してこだわりはあっても、それ以外のものが使用できないということは全くな…

相対するは異形

そこにあるのは圧倒的な威圧感と圧迫感。そして存在を根底から脅かすほどの恐怖だった。生来の感覚が由来し、和真の視界にそれらの根源が映ることはない。だが、そんな和真であっても明確に認識できるそれは、強く上位の異形なのであろうことを感じさせた。そ…

甘くもない冷たくもないハナシ

寒さの底が見えるこの季節、世の中が色めき浮き立つようなイベントがある。バレンタインデーというやつだ。国によってそれぞれではあるが、こと日本におけるバレンタインの意味合いというと専ら、告白イベントや愛を語り贈り物をするイベントというような認識…

嫌悪と献身の間にて

いつからだったろうか。僕が、こんな体質になったのは。いつからだったろうか。僕が、このことに嫌悪するようになったのは。いつからだったろうか。この行為に絶望を抱いたのは。いつからだったろうか。いつまで続くだろうか。一生このままなのだろうか。僕は…

不協不一致不愉快戦線

 どうしてまたお互いが関わることになってしまったのだろう。 二人はそれぞれそんな風に感じながら、お互いに視線を向けた。ぶつかった視線は、片方をより不服な表情に、また片方を困り果てた苦笑を浮かべさせた。 彼らは本来、交わることのない存在だ。仕…

封じられた悪夢

予想外、想定外の出来事というのは世の中に多く存在する。それこそ無数に発生し、誰の身にも等しく起こりうるものだ。左雨行孝、そして神来社八雲にもそれはやはり等しく起こりうる。まさか、二人の手が手錠で繋がれていようとは思うはずもないが。誰よりも不…

射抜く赤は死神の色

──ばちん、ばちん!嫌なラップ音が鳴る。それは誰の耳にも明確に届き、この場を不穏な気配に染めていった。「左雨さん!」「分かってる、予想通りってことだよね……っ! 和真はそこで待機、いつも通り他の奴らをこっちに来させないで」「了解です」街の路…

不協和音の協和音

白髪の男は今回、合同で任務にあたれと指示を受けて連れて来られた男に対して、あからさまに不服そうな表情を向けた。不服そうな視線を向けられている黒髪の男の方は、そんな視線を気にかける様子ひとつなく通された場所をぐるりと興味深そうに見渡している。…

行孝の小話

──僕は、僕が、僕のせいで。衝撃と共に訪れたのはそんな脈絡の無い言葉だった。取り立てて不幸せではなく、どちらかと言えば一般的で幸せな家庭に育ち、そして生きていた子供。それが左雨行孝だった。ある日突然、日常は崩れる。行孝に落ち度はない。身構え…

行孝の心情 遠華仕様

「破壊者! お前は世界を壊そうとしているんだろう!」人々の怒声が飛ぶ。この世の憎悪を全てひきうけている錯覚に陥るような声と視線を受け、行孝は冷たく笑った。嘲りと侮蔑を含んだ笑みは、どこか悪役じみていて彼自身そのことにおかしさすら覚える。「く…

神へ望まば

祝詞は神への言葉だ。その中における祓詞(はらえことば)は罪や穢れなどの不浄を取り除くために神に捧げる言葉であり、その奏上は力ある者によればより強く作用する。そのことは人の理とは少し離れたものに触れる仕事をする者たちには、そのことは純然たる事…