冷たい夢にぬくもりを(45)

 ──嫌な夢を見た。
 それは親と妹との望むはずのない別離。絶望と悲しみ。
 それは大好きな叔父を冷たくあしらう血縁の冷えきった感情。

 ──見たくない。思い出したくない。
 必死に忘れようと蓋をした気持ちたち。忘れたい現実たち。

 うなされて、目が開いたのは二人同時だった。
 互いにホテルのベッドでそれぞれ眠りについたはずだったが、通路を挟んで視線が交差する。
「……!」
「……そーちゃん」
 目覚めてすぐの環の声は少し掠れていたが、はっきりと壮五を呼んだ。
「どうしたの、環くん」
「そーちゃんもやな夢、みた?」
 環の問いに壮五はどきりとする。まるで全てを見透かされているような気分だ。
「……うん。環くんも?」
「……そ。すげーやな夢」
 認めたくはなさそうだったが、それでも環は偽りなく言葉を口にする。ほんの少しの間の後、環が再び口を開いた。
「なぁ。そっちで一緒に寝てもいい?」
 懇願する瞳は必死だ。
 そんなに必死にならなくてもいいのに、と思いながら壮五はよどみなく頷く。
「いいよ。おいで」
 返事を合図に、環が壮五のベッドへ潜り込む。互いの体温が薄らと、それでいて確かに伝わり不安を溶かし始めた。
「今度はよく寝れそ……」
 もうすでにうつらうつらとし始めた環がつぶやく。
「僕もだよ」
 壮五も言葉を返しながら、再び眠りへと誘われて行った。

 このぬくもりは、きっと悪夢など打ち消すだろう。