涙は嬉しい時も流れるんだよ(スレミク)

「スレイ……?」
 懐かしい気配と感覚に、ミクリオは自然と声をもらす。穴から落ちかけたミクリオの身体を引き上げる右手には、懐かしい導師の紋章の意匠が施された手袋がはめられていて視覚的にも懐かしさを覚えずにはいられない。
 力強い腕を使いミクリオのことを引き上げると腕の主は、先程ミクリオがその身体を落としかけた穴の淵にぺたりと腰を下ろして大きく息を吐いた。
「……スレイ、なのか?」
 全身の感覚全てが、ミクリオの目の前にいる人物をスレイと断じていたがそれでもやはり問いかけずにはいられない。
「間一髪だったな、ミクリオ」
 問いかけの言葉に答えることなく、屈託のない笑みをミクリオに向ける彼の姿は彼の問いかけを肯定する答えそのものであり、思わずその現実に息を飲む。
 目の前に座るミクリオが待ち続けた想いびとであることを実感するとともに、無意識のうちにはらはらとその目からは涙がこぼれ落ちた。
「泣くなよ」
「……っ、おかえり……スレイ」
「ただいま、ミクリオ」
 スレイは柔らかな手つきでミクリオの涙をぬぐいながら、優しい声色で声をかける。次から次へと溢れ出そうになる涙を堪えながらミクリオは笑顔を浮かべて迎える言葉でスレイのことを受け止めた。