交換の条件は(スレミク)

「ミクリオ、バニラソフトクリーム作ってよ」
「いいけど、どうしてだい?」
 スレイのなんの脈絡もなく発せられた要望に、了承しつつもその唐突さが気になってミクリオの口から疑問の言葉がこぼれた。
「だって食べたいから」
「全く……さすがに甘えすぎじゃないのか」
「えー、いいだろ?」
「じゃあ、こうしよう」
 欲望に忠実なスレイの言葉に苦笑を浮かべながら、少しからかうくらいのつもりで提案の言葉を口にする。
「僕はバニラソフトクリームを作る、君はその対価になるものを用意する」
「交換、ってこと?」
「そういうこと」
 ミクリオの提案にスレイは口に手を当てながら驚くほど真剣な面持ちで思案し始めたかと思うと、何かを思いついたらしくその表情を輝かせた。
 その目まぐるしく変わるスレイの表情に、正直なところ満足を覚えたミクリオではあったが次の瞬間の出来事に呆気にとられることになる。
「これなら対価になる?」
 尋ねる言葉と共にスレイはミクリオの方へ、ずいと一歩近づくと顔を首元へ寄せて首筋から喉にかけて何度か軽く口づけたのだ。
「え……」
 ミクリオは一瞬何が起きたのか分からず、自分から顔を離して悪戯に成功した子供のような悪い笑顔を浮かべるスレイを見つめることしか出来ない。
「ね、ミクリオ。これと交換、いいよね?」
 スレイの問い掛けにミクリオは黙って、小さく何度も首を縦に振った。
 やった! と声を上げて喜ぶスレイを尻目に、今しがた口づけられた場所をそっと手でなぞりながらミクリオは視線をしたに落とす。
(こんなのずるい……それに交換の対価どころか貰いすぎだ……)
 次第に照れくささや恥ずかしさで頬どころか顔そのものが赤く染まるミクリオに、スレイは先程までの子供のような無邪気な喜びようから一転して妖艶とも思えるような笑みを浮かべ
「今のじゃ足りなかった?」
と、ミクリオの耳元に口を寄せて囁く。
「ばか」
 消えそうなほど小さな声で呟くとミクリオは、まだ赤く染まったままの顔をスレイの方へと向けはにかんだ。