意識の匂い(tnzn)

 学校からの帰り道、今日は俺と善逸の二人きりだ。本当は伊之助も一緒に帰ろうと話していたが、何故か冨岡先生に連れていかれてしまった。
「伊之助、大丈夫かなぁ」
 善逸は心配そうに学校の方を振り返っている。確かに心配だ。
「そうだな……明日、話を聞いてみよう」
「うん」
 いつもだったらもっと舌を噛みそうなくらいの勢いで話す善逸が、今日は静かだ。何かが分かるかもしれないと
匂いを嗅いでみたら、緊張の匂いがする。

 ――緊張?

 緊張しているとは考えもしなかった。善逸は一体何に緊張しているのだろうか。
「どうしたんだ、善逸。緊張しているのか?」
 正直にきいてみたら、善逸は少し不機嫌そうに口を尖らせてから「別に? 何も無いよ?」とだけ答えた。
「嘘だろ、緊張の匂いがしているぞ」
 強くなっていく緊張の匂いを指摘してやると、善逸はさらに不機嫌そうな顔をする。
「そういうのやめろよ……」
「そういうの?」
「匂いで半端に察するのやめろって言ってんの!」
 どうやら、俺が悪いらしい。困ったな。
「なぁ、善逸。どうしたんだ? 言ってくれなければわからない。教えてくれ」
「……っ」
 今度は顔をそむけられてしまった。匂いは緊張に羞恥心が混ざり合い、複雑なものになっている。たまにほんの少し感じるのは、照れだろうか。何に照れているのだろう、俺にはよく分からなかった。
「善逸」
「なんだよ」
 相変わらずそっぽを向いたままの善逸を、もう一度呼んでみる。応える声は、ぶっきらぼうだがさっきよりも照れが強く匂いに現れている。
「何をそんなに照れているんだ?」
「察しろよ……ばかっ」
 怒られてしまった。察するのをやめろと言ったり、察しろと言ったり、忙しいやつだ。
 でも、善逸からは甘くていい匂いがした。