行孝の戦闘描写うんぬん

いち早く察知した嫌な気配に行孝は振り返る。
そこには確かに〝何か〟がいて、行孝の間合いの外から反則じみた形で腕を伸ばしていた。
「ちっ」
あからさまに不愉快という表情とともに舌打ちをひとつ落とすと、力任せに鯉口をきり得物を抜き放つ。
そして腕と呼ぶにはあまりにも異様なそれを力任せに叩き斬って、そのまま真っ直ぐに突っ込んで行った。
突き進む勢いをそのままに異形のものをひと突きにすると、それはくぐもったこの世のものではないことを如実にうかがうことのできる声というにはあまりにも非現実の音を吐き出す。
その音に行孝は不快感を滲ませてから、全力でその異形を正面切って蹴りつけた。どんと重たい音が鳴る。
蹴りの衝撃を利用して行孝は異形を刺し貫いた切っ先を引き抜くと、最後に一刀両断斬り捨てた。
「ばっかじゃないの」
この上なく不愉快の色が滲んだ声が吐き出される。
向ける視線は冷たく異形が消えゆく様子を見下していた。

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背後から静かに何かが迫る。
気配を殺し、存在を殺し、これがおおよそ普通の人間であったなら察することもままならない現実とはかけはなれた何か。
だが、それの唯一の不運は狙った相手の持つものを見誤ったことだった。
伸ばされた不定形の何かは真っ直ぐに人間に向かう。狙い澄ましたそれがもうすぐに達するだろう瞬間、紫の瞳がぎらりと光る。
「残念だったね」
その言葉と共に口角がはっきりと持ち上がった。
表情に浮かぶのは挑発と侮蔑。
人間からかけはなれた存在には分からない。この圧倒的に不利とおぼしき状況において、目の前の人間が笑う理由が。
異形が狙い定めていた人間──行孝は、その手を素早く自身の得物へかけると振り向きざま上向きに抜き放つ。
その一太刀はは異形の向けた全てを斬り落とし、あっという間に形勢をひっくり返した。
次に振り下ろされる白刃によって異形の頸──のようなもの──と胴体は完全に物別れにされ、呆気なくその存在に終わりをもたらす。
「僕にお前みたいのが敵うわけないのにね。ばいばい」
突き放すような冷たい瞳が終わりゆく異形を見つめた。
そしてその最期を迎える異形の胴体に行孝は容赦なく反動をつけた蹴りを見舞い、その場に残された頸を地面に踏みつける。
ぶちんと鈍い音がした。