七星暁彦はとある店の一角で、頭を悩ませていた。
彼の姿はいわゆる文具売り場にある。その中のブックマーカーを取り扱ったコーナーで立ち止まり、一人ものを凝視していた。
そもそもどうして暁彦がブックマーカーとにらめっこをしているかというと、先日行った温泉旅行の際に七海弓花から星空を模した意匠のペンを貰ったことに起因する。
何かお返しをしたい、と思ったところまではいいのだがプレゼントというものは何を選んだらいいか分からない。
いろいろと調べて実用性も兼ねるだろうブックマーカーにやっと決めた。
だがあまりにも種類が多いということを売り場で実感している。というのが現状だった。
ブックマーカーと一括りにしたところで、デザインは多岐にわたり暁彦の頭を悩ませる。大きな飾りのついたものは邪魔になるだろうし、何よりも勝手が悪い。そんなことを考えれば考えた分だけ、何も決まらないままに時間だけが過ぎ去っていくのだ。
「うぅ……」
あまりの悩ましさに、思わず口から声がこぼれる。
下を向いたときに視界には当然これまでとは違うものが目に入ってきた。そこに置かれているものもブックマーカーではあるのだが、暁彦のずっと見ていた平らなタイプのものとは異なり、棒状のものに飾りがついているシンプルだが煌びやかなものたちだ。
「あ……これ……」
導かれるように手に取ったのは、雫の形をした小さな飾りの中に花を閉じ込めた飾りのついたものだ。強く主張するでもなく、華美なものでは決してないが雫の中に咲く花が暁彦の中で弓花と重なる。
これしかない。そう思って、やっとレジへと向かった。
「七海さん」
翌日の学校終わりのことだ。今日は若菜と出かけると嬉しそうに話していた弓花を暁彦が呼び止める。
教室の中の生徒はまばらで、目立つようなこともない。
その中で呼び止める声に、弓花は振り返りながら首を傾げた。
「どうしたの? 七星くん」
「これ、この間のお返し」
暁彦の差し出したのは、もちろん件のブックマーカーだ。
「お返し?」
そう言いながら弓花はブックマーカーを見つめて、花が綻び開くがごとく嬉しそうにそして照れくさそう微笑む。
「ありがとう……嬉しい」
表情からも言葉からも、彼女が少なからず喜んでいると察するにはあまりある。
暁彦は胸をなでおろした。
