無意識に意識して

自分の思うほど、世界は窮屈なんかじゃない。
これまでは苦しくて、辛いばかりだった現実が、大きく開けたのは言うほど前の話という訳でもないのだが、すっかり時間が経ってしまっているような気もする。
少なくとも、変わった世界は自分にとって楽しいく、そして充足した感覚を抱かせることあまりあるものだ。
笑いあえる友達がいて、頼れる仲間がいて。守りたいと思う日常は、自分自身にここにいてもいいのだと実感させる。
嬉しいのだ、純粋に。幸せなのだ、正直に。
知りたかった、憧れだったものが手の内にあるのはこんなにも幸福な事なのだと知れたのがたまらなく嬉しい。
苦しいも辛いも知ったから、今が愛おしくて大切でたまらなく尊いものと知る。だからこそ満足を持てているはずなのだ。
なのに。

──君が笑うと嬉しくなるのに、それが僕の隣ならいいのになんてどうして欲を抱いてしまうのだろう。

知らなかったものは、いろんな感情を運んでくる。知識と経験が紐づくことは少なくないが、今回ばかりは紐づく気配はない。
疑問を抱くその気持ちは膨らむばかりで、そこに明確な答えのないことにもどかしさばかりを覚えた。
だからこそ、駆け寄ってきた彼女の姿に嬉しいという感情を覚えたことも、その理由にまでは辿り着けない。ただ、嬉しいという気持ちだけが確かにそこにある。
きっと間の抜けた顔をしているだろう、などと頭の片隅で思いながらも問い掛けられた言葉への返答を思案した。

これも恐らく、悪い感情ではない。確信めいたものだけは確かにあった。