神様なんて信じていなかった。彼は目の前の光景を直視出来ず、天を仰ぐ。
いつだって自分の力で生きてきた。望みはこの手で叶えられると信じていたけれど、これはあまりにも理不尽で息も止まるほどの残酷だ。
教えて欲しい、どうしたらいいのかを。目の前の絶望を変える力が欲しかった。守りたいのはなんでもない日常で、ありふれた日々なのだ。
彼の想いは止まらない。両腕に抱く傷つきぼろぼろになった彼の愛しい人は、小さく身じろいだ気がした。
「ねぇ」
掠れた声が彼を呼んだ気がする、しかし彼女は本当は冷たくなったまま動くことも無い。彼女を強く強く抱き締めながら、彼は世の理不尽を呪った。
――いま、神に祈ろう。もう二度と守りたいものに手が届かないことがないように。この世の理不尽に屈することなどないように。
