幼い頃からずっとずっと、遙は真琴にとってヒーローだった。
他人に興味のない様子を見せながらも、その実は優しくそしてその優しさを体現するだけの強さを持っていた。
それはすっかり成長を遂げた今でも変わることなく真っ直ぐ、素直な様には安心させられる。
「ハル」
真琴がいつものように呼びかけてみれば、鮮やかな水の色をした瞳が向けられた。
「どうした、真琴」
続けられる言葉に真琴は微笑んでみせる。
「ううん。最近、いい表情になったなって思って」
「……なんだそれ」
ほんの少し不服そうに口をとがらせた遙だが、不愉快という様子はない。
こんなやりとも幾度となく繰り返してきたものだ。一度は前向きなやりとりすらも困難になってしまうのではないか、そんな危惧を感じた。それを思えば、今のこの関わりはこれまでと変わらない、落ち着きのあるものだ。
真琴はこの奇跡的な当たり前に心から感謝して、やはり笑みを見せる。
「真琴こそ今日はやけに嬉しそうにしてる。いいことでもあったか?」
目の前の真琴の笑顔に遙の方が今度は問いかけた。少し覗き込むようにして見つめてくるその視線は変わらず真っ直ぐで、それが真琴にとってはとてつもなく愛おしく、遙のことをやはり大切だと改めて思う。
「うん。きっとこれからもたくさんいいことがあるんだろうなって思ったら嬉しくて」
「……気の早いやつだな」
返す言葉と共に、遙の表情が柔らかく穏やかなものへと変わり、二人の間にはゆるやかで落ち着いた時間が流れた。
やはり、遙は真琴にとって今も昔もヒーローで、唯一無二の幼馴染だ。
改めて、そして何度でも思い知る。そしてやはり何度も感じるのだ。。
こうして隣に立っていられるという、幸福を。
