逃げる尾を掴むには

 思うにこれが恋だろう。
 断定できない理由はただ一つ、これは初めて抱く気持ちだからだ。胸の奥が締め付けられるような、そんな切なさが込み上げて止まらない。
(きっと筒抜けなんだろうなぁ)
 炭治郎は切ない気持ちを自身に抱かせる金髪の君に思いを馳せる。きっと耳の良い彼のことだ、この炭治郎の気持ちにも気がついて姿を隠しているに違いなかった。もしくは彼自身の気持ちを悟らせないためか。
 どうにせよ、炭治郎は頑固で諦めはいい方ではない。根比べなら負ける気がしなかった。
「勝負だ、善逸」
 姿の見えないままの想い人、善逸にわざと聴こえるように声を張る。一瞬炭治郎の嗅覚に、焦りのような感情を帯びた善逸の匂いが届いて消えた。
 炭治郎は不敵に笑う。勝負の火蓋はここに切って落とされた。